「何のために」を問い続け誕生した、ビジョン起点のブランディング会社

「何のために」を問い続け誕生した、ビジョン起点のブランディング会社

Masataka Hagiwara

2026年8月22日

「作って終わり」では、ブランドは残らない。萩原雅貴さんが代表兼クリエイティブディレクターを務める株式会社RecorC(リコルク)は、あえてディレクターだけでチームを構成する。制作物を作って終えるのではなく、経営者のビジョンに寄り添いながら、ブランドの本質や経営課題を共に見つめるためだ。 相手の言葉の奥にある本音や、まだ言語化されていない欲求まで見つめる。萩原さんのブランドに向き合う姿勢は、そのまま仕事に向き合う姿勢でもあった。

「伴走」を本気でやるためのチーム編成

自己紹介をお願いいたします。

株式会社リコルクで、代表取締役兼クリエイティブディレクターを務めています。リコルクは、企業のブランディングやマーケティングを支援する会社で、ブランドの付加価値を生みだすための「戦略クリエイティブ」と確度の高い「戦術ディレクション」を武器に活動しています。

これまで、ブランディングデザイン会社をはじめ、小売業や機械メーカーなど、さまざまな業界で経験を積んできました。そうした経験を経て、現在の仕事にたどり着きました。今の仕事は本当に楽しく、自分にとっては天職だと感じています。これまで積み重ねてきたさまざまな経験が、今の仕事につながっていると実感しています。

リコルクの特徴を教えていただけますか。

リコルクの大きな特徴は、あえてディレクターだけでチームを構成していることです。その理由は、経営者の方により深く伴走したいという思いがあるからです。「伴走」という言葉は多くの会社が使っていますが、僕たちはその中でも、ブランドマネジメントの領域で伴走することを大切にしています。

一口に伴走といっても、デザイン、広告、特定課題に対するコンサルティングなど、その形はさまざまです。その中で僕たちは、経営者のビジョンを起点に、ブランドの本質や経営課題と共に向き合いながら、長期的にブランド経営を前に進めていく役割を担いたいと考えています。

もちろん、広告の企画運用、クリエイティブの提供は行っています。ただ、ビジョンに向かって深く伴走することを大切にしているからこそ、あえて社内に専属のクリエイターやエンジニアを置いていません。社内に制作体制があると、どうしても制作スケジュールにプロジェクト全体が左右されてしまいます。経営者の方が「一度立ち止まって考えたい」と思っても、社内の事情によって、そのタイミングに合わせられないこともあります。

そうした状況を避けるために、僕たちは特定の領域に軸を持ちつつ、領域を越えて動けるディレクターだけを社内メンバーとして揃えています。"branding" の「ing」が示すように、ブランドづくりは一度で終わるものではなく、継続して育てていくものです。だからこそ、僕たちも長く寄り添いながら、ブランドづくりを支えていきたいと考えています。

制作を請け負うというよりは、経営者のパートナーとして伴走するディレクターが集まっている会社、というイメージでしょうか。

そうですね。僕がクリエイティブディレクターを務めていて、もう一人の共同代表はマーケティングディレクターです。

共同代表は、広告をはじめとしたコンテンツマーケティングや、それに伴うKPI・KGIの設計に精通しています。クリエイティブディレクションとマーケティングディレクション、それぞれの専門性を掛け合わせながら、ブランドマネジメントをより強固にしていくことを大切にしています。

制作については、僕が「この人と一緒に仕事がしたい」と心から思える優秀な外部のクリエイターの方々とタッグを組んで進めています。

どのようなクリエイターの方に魅力を感じ、一緒に仕事をしたいと思われますか。

人や物の強みに目を向けられる方と一緒に働きたいと思っています。他者の弱みを見て自分が優れていると勝ち誇るのではなく、強みを見つけ、それをどう活かせるかを考えられる人がいるチームは、自然と全員のポテンシャルが引き出されていくと感じています。

もう一点は、「理解した」で満足せず、常に新しい問いを持ち続けられる方です。ブランディングやマーケティング、クリエイティブの仕事に唯一の正解はなく、正解自体も常に変化しています。そうした環境の中で、探究を止めない姿勢を持っている方と一緒に仕事をしていきたいと思っています。

なるほど。反対に、あえて言葉にするなら、「一緒に仕事がしづらい」と感じるのは、どのような方ですか。

先ほどとは逆ですね。僕は、「作業者」とはタッグを組むことができません。なぜなら、自分が彼らに伝えることが常に正しいとは考えていないからです。コンセプトを共有した際に、それをそのまま受け入れ、「そのまま形にすればいいんですね」と捉えてしまう人とは、良いアウトプットは生まれないと感じます。

本当に深みのあるアウトプットを生み出すには、「なぜそう考えたのか」「本当にこれでいいのか」と問いを持ち、対話を重ねることが欠かせません。だからこそ、質問をしない人や疑問を持たない人、ただ言われたことを形にするだけの作業者とは、価値観が合わないと感じます。

「価値とは何か」を考え続けた先にあった天職

そうした考え方に至ったきっかけはあったのでしょうか。

このように考えるようになったのは、社会人になってからです。自分自身の価値や、おすすめしたい商品の価値を相手に正しく伝えることの難しさを痛感しました。就職や転職活動で苦戦したことをきっかけに、「価値とは何か」を考え続けるようになりました。その経験が、今のブランドや言葉に対する考え方につながっています。

その葛藤や課題意識が、会社を創業したきっかけでもあったんですね。

そうですね。何かを始める最初の原動力は、いつも憤りから生まれることが多いです。反骨心と言ってもいいかもしれません。人と対話する中で悔しさや違和感を覚えることがありますが、そういう時は「反骨心をありがとう」と受け止めるようにしています。その感情が、新しい挑戦や行動を起こすきっかけになるからです。振り返ると、多くのことはそうした憤りから始まっているように思います。

クライアントの方々からは、どのような印象を持たれることが多いですか?

創業して2年近くなので、そういった評判を耳にする機会はまだ多くありませんが、僕がよく言われるのは、「心強いです」や「いてくれて良かったです」といった言葉です。

集客やブランド価値を高めることに関しては、僕たちが隣にいて答えられないことは基本的にありません。背中を預けてもらえる存在でありたいと思っています。

実際、創業以来、本当にありがたいことに契約を解除されたクライアントはまだ一社もありません。まだ2年という期間ではありますが、解約率がゼロというのは、それだけ背中を預けられる存在として見ていただけているのかなと感じています。

そうした信頼関係を築けている理由は、どこにあると思いますか。

それでいくと、先ほどお話しした創業の経緯にもつながるのですが、やはり「伴走する」というスタンスにあると思います。

僕たちは、「これをやってください」「分かりました」と受け身で支援することは基本的にありません。むしろ、一歩先を見据えて動くことを大切にしています。

事業を進めていると、どうしても目の前のことで精一杯になり、次に何をすべきか見えなくなることもあります。だからこそ、僕たちは1年から3年程度のロードマップを描き、「こうなったら次はこうする」と、その先の打ち手まで見据えて考えています。

同じ熱量で能動的に伴走していくという意味では、イメージとしてはマラソンのペースメーカーに近いかもしれません。「ゴールへ行きたい」というクライアントに対して、そのゴールへたどり着くための方法を一緒に考えながら進んでいく。そんなスタイルで取り組んでいます。

お仕事をする中で、特に心に残っている出来事や「やってきてよかった」と感じた瞬間を教えてください。

僕は、チームをとても大切にしています。自分一人の力で何かを成し遂げたと思ったことはなく、自分には弱みのほうが多いと感じています。だからこそ、それぞれが持つ異なるクリエイティビティを掛け合わせ、一つの目標を達成できた時の喜びは、言葉では表せません。普段は言語化を大切にしていますが、その瞬間だけは言葉にならないほどの喜びを感じます。

この1年間で、クライアントのイベントが満員となったことが2度ありました。そうした成果をチーム全員で喜べる瞬間は、本当に嬉しいですね。

また、1点100万円以上するジュエリーを扱うラグジュアリーブランドのクライアントがいるのですが、それまでは「自分たちはニッチだから、広告を出しても集客は難しい」と考えていたそうです。しかし、自分たちの価値を丁寧に掘り下げ、それを広告に落とし込んだことで、多くの新規のお客様が展示会に来場し、実際に購入にもつながりました。

その時、クライアントが「自分たちの努力が報われた」と実感された表情や、お客様が「このブランドにはこんな価値があったんだ」と感じてくださる瞬間を目にすると、この仕事を続けてきてよかったと心から感じます。

RecorC流・ブランドとの向き合い方

クライアントの方と対話を重ねる中で、どのように課題を見つけていますか。

伴走を始める前に、まず目標やビジョンを明確にします。そこを掘り下げることを嫌がるクライアントもいるかもしれませんが、僕たちは必ずそこまで向き合います。

ゴールや理想が明確になると、現状とのギャップも見えてきます。そのギャップを課題として整理し、さらに使えるリソースがどれくらいあるのかを把握した上で、優先順位を決めていくという流れです。

耳の痛いことも含めてしっかり向き合いながら、クライアントと一緒にゴールを目指していくイメージですね。萩原さんご自身も、会社経営に限らず、ご自身の人生の中でそうした自己分析や内省を大切にされてきたのでしょうか。

自己分析というか、自分に対して問いを立てることはかなりしてきたと思います。

僕は、目的がないまま物事を進めるのはつまらないと感じるタイプなんです。サラリーマン時代には、上司から「社会不適合者」と言われることもありましたが、ビジョンやゴールが明確でないと原動力が湧かず、仕事をしていても面白いと思えませんでした。「何のためにこれをやっているのか」「何のために残業しているのか」が分からなくなると、パフォーマンスも一気に下がってしまいます。

だからこそ、ゴールを誰かに与えてもらうのではなく、自分自身の中にしっかり持っておくことが大切だと考えるようになりました。そのために自己分析を重ね、自分が目指す場所を明確にしています。

そうした考え方があるからこそ、クライアントともビジョンやゴールを共有した上で、伴走を始めるようにしています。

今のリコルクという形にたどり着いた背景にも、そうした分析があったのでしょうか。

そうですね。根っこには、そうした考え方があると思います。

今のリコルクになった背景の一つは、市場を見た時の課題意識です。ブランドマネジメントや本質的なマーケティングにフォーカスしている会社は、本当に少ないなと感じていました。ブランディングと言いながらも、デザインや広告のみを提供している会社は多くあります。一方で、対象ブランドの"選ばれ続ける理由"を深く掘り下げ、そこを起点にあらゆる施策へ落とし込む。さらに、その理由を守り育てていくための企画・マネジメントまで一貫して担う。そこまでやりきる会社は少ないという印象がありました。

もう一つは、シンプルに自分たちの特性です。クライアントとビジョンやゴールを共有し、一緒にゴールを目指すプロセスそのものを楽しみたいという思いがあり、今の会社の形になっています。

相手の言葉の裏側まで理解しようとする姿勢は、創業した頃から意識されてきたことなのでしょうか。

そうですね。創業当初から、その考え方はずっと大切にしています。

これは欲求だけではなく、価値にも共通していることだと思っています。目に見える価値だけではなく、本当の付加価値というのは、目に見えないところにあるものだと考えています。

例えば、「お腹が空いた」というのは顕在化したニーズの一つですが、その背景にある、より深いニーズまで捉えなければ、本当の意味での満足や感動は生まれません。だからこそ、相手の表面的な言葉だけではなく、その奥にある思いや感情まで理解し、感情をしっかり動かしていきたい。その思いは、創業当初から変わらず大切にしています。

伴走する中で、クライアント自身が考える強みと、萩原さんが見つけた本質的な魅力が異なることもあると思います。そうしたズレは、どのように対話しながら整理していくのでしょうか。

クライアントは、どうしても自社のことになると盲目的になってしまう部分があります。だからこそ、僕たちは「顧客視点」に立つことを大切にしています。どこに視点を置くかによって、価値の捉え方は大きく変わると思っているからです。

明らかに認識がずれていると感じる時は、多くの場合、視点がずれています。例えば、ターゲットの立場に立った時にどう感じるのか、といったことを一緒に考えながら、認識をすり合わせていきます。

また、採用ブランディングであれば応募者視点に立つなど、その時々の相手と同じ視点に立てるよう、常にすり合わせを行っています。

会社の理念と、代表ご自身の価値観や人柄が一致していない企業も少なくないと感じます。一方で、萩原さんは、ご自身の価値観や人格と、リコルクの在り方はどれくらい重なっていると感じていますか。

そうですね。かなり重なっていると感じています。一方で、それが必ずしも良いことばかりだとは思っていません。例えば、僕が病気で倒れてしまった時に、会社が僕一人に依存している状態では長く続きません。だからこそ、最初から「僕だけに依存する会社にはしない」ということは意識しています。

共同代表もいるので、長く続く会社にするために、お互いにすり合わせを重ねながら、チームとしての「人格」を作っていきたいと思っています。僕一人の人格ではなく、掛け算によって生まれる一つの人格を会社として育てていくことが、今後の課題です。

そうした属人化を防ぎ、チームとしての在り方を作っていくために、今後はどのような工夫をしていきたいと考えていますか。

チームとして一つの人格を作っていくためには、どんな人が集まるかがすごく重要だと思っています。だからこそ、これからも「誰と組みたいか」ということを大切にしながら、チームを作っていきたいです。

今後は支援だけでなく、自分たちのブランドも作っていきたいと考えています。その際にも、人ありきで考え、その人が加わることでどう戦えるかをブランドの価値に落とし込みたいです。また、能力や役職よりも、「これを実現したい」という情熱を持っている人を仲間に迎えたいと思っています。

今はスタッフが増え、私と共同代表を含め4名体制になりました。私と共同代表は創業前から、確固たる思いを持ち、お互いの目指す方向性や交差点がどこにあるのかしっかりとすり合わせてきました。今後新しく仲間に加わる方についても、その部分は大切にしていきたいです。

良いブランド、良い仕事とは?

萩原さんが考える「良いブランド」とは、どのようなブランドですか。

定義はいくつもありますが、第一に挙げたいのは「分かりやすさ」です。優れたブランドは期待値のコントロールが非常にうまく、体験する前から、どのような価値が得られるのかをイメージできます。その根幹にあるのは一貫性です。一貫性が保たれているブランドは、やはり強いと感じます。

リコルクのホームページも、キーカラーやワインのコルクといったモチーフが印象的で、ブランドとしての分かりやすさを感じました。

補足すると、「RecorC(リコルク)」という社名は、一見すると読み方が分からず、分かりにくいと感じるかもしれません。しかし、あえてそのような設計にすることで、「社名の由来は何ですか?何でコルクがモチーフなんですか?」という対話が生まれます。そこから、社名に込めた本質的な意味を伝えることができます。

作り手の想いが込められたワインが、時を越えて深みを増し、誰かの人生の一杯になっていくためには、その変化をそっと支え、価値を育てていくコルクの存在が欠かせません。ブランドも同じです。丁寧に育てた"選ばれ続ける理由"を、世界へ、そして次の世代へとのこしていくための"コルク"のような存在でありたい。クライアントの価値を育てながら、私たち自身も絶えず変化(Re)し、成長していく。それがRecorC(リコルク)です。

大切なのは、パッと見の分かりにくさを設計する場合においてもきちんと理由を設計しておくことです。一時的に疑問を生む設計であっても、その先でブランドの価値や理念が伝わり、結果として分かりやすさにつながることが重要です。

「らしさ」は、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の中に眠っているものであり、それを問い続けることが大切だと考えています。また、らしさは絶対的なものではなく、相手との関係性や相対的な視点の中で見えてくるものです。さらに、時代とともに変化していくものでもあるため、その時々の答えを大切にしながら向き合っています。

ブランドを作る上で「ここだけは妥協してはいけない」と考えていることは何ですか。

ありすぎて難しいですね。3つ挙げるとするなら、1つ目はチーム内で共通認識・共通言語を作ること。2つ目はインサイトを深く掘り下げること。3つ目はコンセプトです。

この3つを欠くと、うまくいかないことが多いと感じています。一方で、この3つを日々コツコツと積み重ねていけば、ある程度の成果にはつながると考えています。

もちろん、成功には再現性のない部分や運の要素もあります。それでも、この3つを愚直に続けることが、成果につながる可能性を高めるのではないでしょうか。

これから会社として、挑戦していきたいことを教えてください。

会社として独自のブランドを立ち上げたいと考えています。これは遠い将来ではなく、できるだけ近いタイミングで実現したい目標です。

そこに至るまでには段階があると考えています。有形・無形の商材がありますが、最終的に取り組みたいのは有形商材です。ただ、先ほどもお話ししたように、何を作るかは「誰と組むか」によって決まると考えています。そのため、現時点で「コスメをつくりたい」といったように、具体的なものづくりの方向性を決めて話すことはしないようにしています。

目指しているのは、その地域に根づき、地域を象徴するようなブランドを生み出すことです。そうしたブランドを、これから作っていきたいと考えています。

この挑戦は、今の伴走事業と切り離されたものではありません。自らブランドを育てる立場に立つからこそ見えてくる景色や、リスクを負う中でしか得られない学びは、必ず今伴走させていただいているクライアントへの提案にも深みをもたらすはずです。自社ブランドを育てることは、伴走事業をより本質的なものへと進化させていくことでもある。その両輪で成長していきたいと考えています。

短期成果を追わない。次世代に残るブランドを作る

Webサイトに、クリエイティブディレクションの役割について書かれているのを拝見しました。クリエイティブディレクターとデザイナーの違いについて、どのように考えられていますか。

端的に言うと、クリエイティブディレクターの役割は、「誰に・何を伝えるか」を設計することです。

前提として、クリエイティブディレクターとデザイナーに上下の関係はありません。役割の性質が違うだけで、対等な存在です。

その上でお話しすると、クリエイティブディレクターの役割は、「誰に・何を伝えるか」を設計することです。コミュニケーション設計には「Who(誰に)」「What(何を)」「How(どのように)」という考え方がありますが、クリエイティブディレクターはWhoとWhatを明確にし、それをHowへ落とし込めるようにディレクションします。特に重要なのはWhoとWhatです。ここがずれてしまうと、その後の表現や施策もすべてずれてしまいます。

一方、デザイナーは、そのWhatやコンセプトを受け取り、「最も伝わりやすい形は何か」を細部まで問い続けながら形にしていく役割です。

つまり、クリエイティブディレクターは戦略やコンセプトを設計し、デザイナーはそれを最も伝わる形へと具現化する。それが両者の大きな違いだと考えています。

クリエイティブディレクターとデザイナーが一緒に仕事をする上で、大切だと思うことは何ですか。

やはり信頼関係や共通言語を築くことが大切です。その上で意識しているのは、できるだけ「暗黙知」をなくすことです。形式知と暗黙知があるとすれば、「察してほしい」というコミュニケーションをできる限り減らすことが、良いチームづくりにつながると考えています。

一方で、クリエイティブディレクターとして大切にしているのは、形に対する指示を出しすぎないことです。何を伝えたいのか、どのような感情になってほしいのか、どのような行動を起こしてほしいのかは明確に共有します。しかし、それをどのような形に落とし込むかという具体例は、あえて示さないようにしています。

その理由は、デザイナーのクリエイティビティを最大限に生かしたいからです。具体例を示してしまうと、デザイナーの仕事を奪うことになりかねません。「参考サイトはありますか」と聞かれることもありますが、参考サイトを共有すれば、その表現に引っ張られてしまいます。

デザイナーの役割は、参考サイトを再現することではなく、トーン&マナーやブランドの世界観をもとに、新しい表現を生み出すことです。だからこそ、具体例を示すことで、その人の強みや、デザイナーとして表現を生み出す喜びを奪わないようにしています。

リコルクのチームメンバーには、どのような資質や価値観を求めていますか。

たくさんありますが、一番大切にしているのは、仕事において短期的な成果に縛られないことです。目先の数字や分かりやすい成果だけを追うのではなく、常に未来を見据えながら、お客様を応援する姿勢を大切にしてほしいと考えています。

例えば、僕らの業界には、値下げなど「こうすれば売れる」という短期的な打ち手が数多くあります。しかし、それが長期的にブランドにとって良い選択とは限りません。薬機法に抵触するような「100%効果があります」といった表現も、一時的には成果につながるかもしれませんが、長期的にはブランドの価値や信頼を損なってしまいます。だからこそ、次の売上だけではなく、次世代にも残るブランドを作るという視点を持ち、未来志向でお客様を応援したいと思える方と一緒に働きたいですね。

リコルクで、どのような考え方や視点が身につくと考えていますか。

ブランディングやマーケティングの考え方は、仕事だけでなく人生にも生かせるものです。ニーズを紐解き、自分の強みをどのように伝えればミスマッチをなくし、相思相愛の関係を築けるのかという考え方は、恋愛や友人関係にも通じます。自分の人生を戦略的に考え、理想を追求する上でも、とても良い環境だと考えています。

また、AIは「How(手法)」の領域には非常に強い一方で、人間にしか生み出せない価値は、細部へのこだわりや独自の視点にあります。「神は細部に宿る」と言われるように、最後までこだわり抜く姿勢や、AIでは代替できない発想の飛躍、いわゆる「クリエイティブジャンプ」は、人間だからこそ生み出せるものです。

リコルクでは、経営者と伴走しながらブランドの上流工程に携わり、10年先を見据えてブランドの価値を育てていきます。そのため、目先の目標にとらわれず、長期的な視点で伴走する力や、人間ならではのクリエイティブな思考を身につけられる環境だと思います。

ありがとうございます。最後の質問です。萩原さんにとって「仕事」とはどのようなものですか。

究極の問いですね。
仕事とは自分の価値観やクリエイティビティを社会に向けて翻訳し、喜びをつくり出す行為だと考えています。

ブランドマーケティングやクリエイティブディレクションという仕事を続けているのも、突き詰めるとそこに行き着きます。クライアントが持っている価値観や情熱を、社会に伝わる言葉やビジュアルに翻訳し、それが誰かの喜びにつながること。そこに自分の仕事の意味があると感じています。

だからこそ、表面的なかっこよさよりも、「なぜそのブランドが存在するのか」「このブランドのお客様は誰なのか」「本質的な価値は正しく伝わっているのか」という問いに向き合い続けることを大切にしています。深く理解することなしに、正しく翻訳することはできないからです。

本日はありがとうございました。萩原さんの考え方や、劣等感や葛藤を乗り越えながら自己解像度を高めてこられた過程を伺うことができ、とても印象深いインタビューでした。最後に、これからリコルクへの応募を考えている方へ、メッセージをいただけますか。

リコルクのミッションは、「応援を集めて挑戦を支える」ことです。その言葉が理念として掲げられているだけではなく、実際に職場の価値として感じられる環境を、今二人で少しずつ作っています。

僕自身、挑戦しようとした時に足を引っ張られた経験があります。だからこそ、挑戦する人を否定する人が社内にいない環境をつくりたいと思っています。それは社内だけではなく、例えば長野という地域や、関わるコミュニティの中でも同じです。「やってみたい」という気持ちに蓋をしなくていい環境を広げていきたいと考えています。

挑戦は、応援があってこそ続けられるものです。だからこそ、挑戦する人も、応援する人も増やしていきたい。その両方が自然に生まれる環境が、リコルクにはあることを知っていただけたら嬉しいです。

今はまだ自分の強みが分からなくても構いません。「こんな自分になりたい」という理想を少しでも持っている方であれば、その理想に近づくための環境は用意できると思っています。