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2026年10月8日
新しい製品やサービスを、私たちは毎日のように目にする。しかし、それが生まれるまでに何を考え、どこで迷い、誰と話し、何を試したのか、そんな「間」について知る機会はあまりない。そこに着目したのが、デザインの祭典「Featured Projects 2026」。
3回目の開催となる本イベントは、「ものがうまれる、その『間』」をテーマに、完成したものの手前にある制作の過程に焦点を当てました。参加者はグラフィックやプロダクト、音楽など、さまざまなものが生まれるまでの思考や試行錯誤に触れることができます。
主催の相樂さんにイベントづくりの背景を伺うと、今年のテーマはイベント全体の“設計図”になっていたことが見えてきました。Webサイト、オリジナル書体、グラフィック、展示、会場で生まれる会話まで、「完成するまでを見る」という視点が、思いがけないところに仕込まれています。
Featured Projects 2026
開催日時
2026年9月25日(金) 12:00〜18:00・26日(土) 12:00〜19:00・27日(日) 12:00〜19:00
会場
コクヨ東京品川 THE CAMPUS(〒108-8710 東京都港区港南1丁目8番35号)


Featured Projectsが掲げているのは、「よいものづくりは、明日を拓く」という信念です。
「よいものづくり」とは何かという問いに、共同代表の相樂さんはこう答えます
「それをつくったことによって、自分や誰かに新しい景色がひらかれるもの。それは、必ずしも大きな変化をもたらすものでなく、小さなものでも、『明日を拓いてくれるもの』だと言えるのではないかと思います」
Featured Projectsでは、運営チームがその時々に考えたいことを、毎年のテーマとして掲げています。2023年は「よいものづくりは、明日を拓く」。2024年は、誰もがつくり手になれる時代だからこそ、「なぜ、何をつくるのか」という原点に立ち返るための「“そうぞう”からはじまる」。そして2026年は、「ものがうまれる、その『間』」です。
背景にあるのは、ものづくりを取り巻く環境の変化です。
AIなどのテクノロジーによって、「入力すれば出力される」ことが当たり前になり、完成されたものへ以前より早くたどり着けるようになりました。一方、その途中にある過程や試行錯誤に触れる機会は少なくなっている。そこで今年は、最終的な形ができるまでに存在する人、技術、思考の重なりに焦点を当てました。
「私自身も日々その恩恵を受け、自分の言語でプログラムを書ける楽しさを感じています。一方で、入力と出力の『間』で何が起きているのかを知らないままでいることに、どこか違和感も抱いていました」と相樂さん。
AIで生成されたコードを読み解きながら、自分では書けなかった部分を理解していく面白さを感じたことも、今年のテーマを考えるきっかけになったといいます。
Featured Projectsにとって、毎年のテーマとは、何かを断言するための答えではありません。
「私たちはこう感じているけれど、みんなはどうだろう?」
イベントに集まった人と一緒に考えるための、問いのようなものです。


面白いのは、そのテーマがイベント当日のプログラムだけに使われているわけではないことです。
Featured Projects 2026の公式サイトには「魚拓」という機能があります。
通常、Webサイトは完成形の状態で公開されます。しかしこのサイトでは、Webサイトやフェスティバルが少しずつ立ち上がっていく過程を遡ることができます。完成後の姿だけでなく、準備や試行錯誤そのものを見せる仕組みです。
イベントのメインビジュアルにも、テーマである「間」が反映されています。
モチーフになったのは、植物が置かれた花台と、水に濡れることで色が変化するコンクリートブロック。水を与えるたびに文字の現れ方や染みが変化し、その状態が少しずつ積み重なっていきます。完成形を固定しない、変化の過程自体を見せる仕掛けです。
会場のグラフィックに使われていた文字にも、Featured Projectsらしい考え方が表れています。
Featured Projects 2026のためにつくられたオリジナル欧文書体「FP MONO」です。ポルトガルのタイプファウンドリーR-TYPOGRAPHYとの出会いをきっかけに生まれ、日本語と並べて使うことを前提に設計されました。
FP MONOが着目したのは、漢字・ひらがな・カタカナが共有する正方形のグリッドです。そこにラテン文字も自然に並ぶよう、文字の幅や高さなどを設計。異なる文字体系が混ざっても、ひとつのレイアウトの中で整って見える書体になっています。
日本語とラテン文字という異なるものが、どちらかに合わせるのではなく、同じ構造の中に並ぶ。そのあり方は、デザインやアート、企業、個人など、異なる分野のつくり手がひとつの会場に集まるFeatured Projectsとも重なります。
さらに公式サイトでは、FP MONOの文字幅やウェイトを実際に動かして文字の形が変化する様子を自分で触って確かめることができます。


そして実際にTHE CAMPUSへ入ると、また違う「間」が見えてきます。
会場にはデザイン、アート、クラフトなど、異なる領域のブースが並び、多くの来場者が行き交っていました。
穏やかな音楽が流れ、多くの人が集まりながらも慌ただしさはありません。コンクリートや金属を生かしたTHE CAMPUSの空間に、木の素材や鮮やかな色、大胆なタイポグラフィが加わり、それぞれ異なる世界観を持ったブースが連なっています。
Creators Marketでは、買い物そのものよりも、つくった本人と話せることが大きな特徴です。ブースの前では、来場者が作品を手に取り、使い方や制作の背景を尋ねる姿が見られました。気になるものを見つけ、本人の話を聞くことで、「何をつくったか」から「なぜ、どうつくったか」へ興味が移っていきます。
その続きを担うのがTalk Sessionです。「つくり手たちの『間』― Creators Market 座談会」では、マーケット出展者が着想のきっかけや制作の日常、届け方の工夫などを語りました。ブースで見たものを、今度は言葉から掘り下げられる構成です。
Table Talkではさらに距離が縮まります。15名ほどでゲストを囲み、お茶を飲みながら同じテーマについて話す形式で、参加者も聞き手に留まりません。試行錯誤を聞き、実際の製品に触れて確かめながら、つくり手と参加者がものづくりについて言葉を交わしました。
「つくる人」と「見る人」のあいだにも、ひとつの「間」があります。そして会話によって、その距離が少しずつ縮まっていきます。


今年新たに加わったLive Performanceは、さらに直接的です。公開制作やVJ、DJなどを通して、完成した表現を見るのではなく、「表現が形を成していく時間」そのものを見せるプログラムとして設けられました。
Exhibitionでは、クリエイターの転機となった作品や、サービスが生まれた原点と変遷をたどるパネル、新しい試みとして制作された作品などを展示。サントリーデザインセンターによる「UN/KNOWN」では、来場者の写真をAIで解析し、そこに表れた感情をグラフィックとして生成。普段の商品開発でも、本人さえ気づいていない感情を想像しながら、何度も考え直してデザインをつくるという彼らのプロセスを、来場者自身が体験できる展示でした。
完成したものを見る。作り手に聞く。途中の思考を見る。自分で作ってみる。その場で何かが生まれる瞬間を見る。と、完成品との距離を少しずつ縮める複数の入口が用意されていました。
相樂さんが語る「新しい景色がひらかれる」という、よいものづくりの考え方。完成したものの背景にある人や技術、思考、会話を知ることで、来場者にもそれまで見えていなかった景色が見えてくる。そうして出会ったものとは、より長く深い関係性を築くことになるでしょう。
「ものがうまれる、その『間』」というテーマは、イベント全体を通して体験するものになっていました。