青森出身。メーカーで機械設計の仕事をする傍ら、2023年からイラストを描き始めたTaurin。絵だけでなく音楽にも手を伸ばし、自由な表現を楽しみながら人との関わりを深めるその姿勢について語りました。
自己紹介と描き始めたきっかけ
自己紹介をお願いします
青森出身で、メーカーで機械の設計をしています。2023年5月からイラストを描いてInstagramに投稿し始めました。仕事でも趣味でも、何かを作ったり表現したりすることがすごく好きです。絵を描くのはもちろん、おふざけで作曲をしてみたりもします。
イラストを始めたきっかけは何ですか?
もともとノートに落書きをするのが好きで、特に「〜っぽい」ものを描くのが好きでした。自分のイラストの右下にサインを入れたら、なんだかイラストレーターっぽく見えるじゃないですか。それをやってみたかったんです。 ちょうど2023年に妹が使わなくなったiPadをくれまして。「せっかくだから描いてみよう」と思って描いた絵にサインを入れて、Instagramのストーリーにアップしたら意外と好評で。「これは続けてみてもいいかも」と思い、そこから本格的に描き始めました。 そのうち「Tシャツにしてみたら?」という話になり、実際に作ってみたら他の人とかぶらない。それが嬉しくて、さらに楽しくなりました。TシャツやLINEスタンプなど、気の向くままに作っています。お金儲けというより、自分の好きな絵を描いて、みんなでわーっと盛り上がれたらいいなという感じです。 以前に家族写真をなぞり描きして、それをワインのラベルにして両親の結婚記念日に贈ったことがあって。とても喜んでくれて、そんなふうに、自分や周りが楽しめる形で続けていきたいなと。
イラストのスタイルと日々の取り組み
どういうスタイルのイラストを描いているんですか?
僕の中では、基本的に3つのスタイルに分けています。 1つ目は「動物シリーズ」です。実際の動物の色に合わせて描くこともあれば、自分なりに「こういう色にしたいな」と思って、カラフルにしたり、本来の色とは違う配色にしたりします。 2つ目は「トレース」というジャンルで、好きなアニメのキャラクターなどをなぞり描きし、自分らしい色の付け方で仕上げます。 3つ目は、自分でゼロから作り出すオリジナルイラストです。誰にでも当てはまるキャラクターという意味で“whoシリーズ”と名付けています。 最初に「何か描きたいな」と思ったとき、真っ先に浮かんだのが動物でした。動物って本当に種類が多いし、柄や形状もさまざま。犬ひとつとっても、犬種ごとに全く違っていて面白い。それで「まずは動物を描こう」と思ったんです。 僕は自然がすごく好きで、子どもの頃は虫取りや魚釣りによく行きました。身近に畜産業もあって、知り合いの家で牛に触れたりもしていました。家の周りは全部田んぼで、カエルの合唱も日常的に聞こえる環境でした。だから東京に出てきたときは、逆にアスファルトばかりで「土がない、寒いな」と感じましたね。青森の冬は雪が積もると、僕の感覚ではむしろ温かく感じるんです。 就職をきっかけに東京へ来ましたが、東京は変化のスピードが速くて面白い。田舎は変化がゆっくりなんです。僕が東京に来たのも、その速い変化を体験してみたいと思ったからです。でも、東京で暮らすうちに、逆に地元・田舎の良さも改めて感じるようになりました。
高い更新頻度を保つ秘訣は何ですか?
最初に投稿したのは2023年5月で、それからずっと毎日投稿しています。最初は「土日は休もう」と思っていたんですけど、今は土日も投稿していますね。 平日の朝は、出社の電車の中で描いています。電車の時間って、スマホを見たり、寝たり、本を読んだりする時間じゃないですか。でも、「その時間に絵を描いたら面白いんじゃないか」と思って描き始めました。描いていると、隣に座ったおばちゃんに見られて「いい色ね」と声をかけられることもあります。「本当ですか?」と答えて、ちょっとした会話になるのも楽しいんですよ。 やめようと思った日はありません。常に「次は何を描こうかな」と考えているし、友達に「これ描いてほしい」とリクエストされることもあります。友達をイメージして描くこともありますね。 色塗りは自分の感覚でやるので、「なんか違うな」と思うときは時間がかかる。そういうときは描き溜めたものの中から選びます。大事なのは、描くことをノルマだと思っていないことです。好きなように描く。趣味ですから、誰に何を言われても自分の好きなように描けばいい。毎日やると決めてはいるけど、それを「義務」だとは思っていません。純粋に楽しみとして描いているだけです。 1つの作品に時間をかけないようにしています。描く時間は20分以内。だから僕の絵は繊細ではないし、正確に描いているわけでもない。ぐしゃぐしゃっと描いたり、隙間をあけたり、色も忠実に再現していません。勢いで描いて「自分が満足したら終わり」。時間をかけすぎると「良い作品にしなきゃ」というプレッシャーになるんです。そうじゃなくて、勢いで描くから気持ちが楽。それが続けられる秘訣かなと思います。意外と後から見ると「味出てるじゃん」と思えることもありますしね。 イラストに関しては、あまりネガティブにならないようにしています。自分ではあまり良くないと思った絵でも、他の人に「この絵好きなんですよ」と言われることがあります。そういうとき、人によって感性が違うんだなと感じますね。
どんなことを考えながら描いているんですか?
あらかじめ「こうやって描こう」と決めてから描くのではなく、手が動くままに描くイメージです。色も、「この色ならこの濃さ」というように、すべて手の感覚に任せています。あまり頭で考えすぎると時間がかかってしまうので、感覚を優先していますね。ただ、自分の中で納得できる色の付け方は必ずします。 動物シリーズでは色を意識することが多いです。納得できる色になるまで少し考えることもあります。一方、トレースは「これ!」と決めたらその色にします。実物と違っても「いや、これでいい」という感じですね。だから時にはゴリラを紫で描くこともあります。本当は紫じゃないけど、自由でいいじゃないですか。描いた時点でそれが正解になる。そう思っているので、あまり人の意見は気にしません。正解がないからこそ、すごく自由なんです。 小さいころから、何かを作るのが大好きでした。レゴブロックやピタゴラスイッチなど、形を作る遊びは特に。そういうのって正解がないですよね。だから「何これ?」と言われても「こういうやつなの」と答えるタイプでした。多分、そういう経験から表現することが好きになったんだと思います。 想像するのが好きで、ちょっと変な言い方をすれば妄想するのも好きなんです。小学校の国語の文章問題で「主人公はどういう気持ちでしたか」という問いに答えるとき、勝手にアフターストーリーまで考えてしまったり。中学校のときは自分で小説を書こうと思って、相関図を作って起承転結まで考えたこともあります。ただ、タイピングができなくて挫折しました。
人と絵に込めた感情
「whoシリーズ」について教えてください
「whoシリーズ」は誰にでも当てはまる…というか、いろんな人を描きたいんです。人って表情や仕草にいろんな意味が込められますよね。ガッツポーズひとつとっても、嬉しいときのガッツポーズもあれば、怒っているときのガッツポーズもある。そういう「見る人によって捉え方が変わる」絵を描きたいと思っています。 人は表情も多彩です。悲しい目をしているのに笑っているとか、泣きそうに笑っているとか。そういう複雑な感情を表現するのが面白くて、このシリーズを描き続けています。 基本的に、僕は人が好きなんです。「無理だな」と思った人には興味がなくなるだけで、嫌いな人はいません。好きか興味がないかのどちらかですね。自分が持っていない考えを持っている人に出会うと、面白いなと感じます。 whoシリーズは、自分の感情の日記みたいなものです。沈んでいるときは沈んだ絵しか描けないし、テンションが上がっているときは明るい絵しか描けません。この前は喧嘩をしたときに、その気持ちを絵にしました。仲直りしたい気持ちもあったので、それも絵に込めました。インフルエンザで寝込んだときは、「寝込んでます」という絵を描きました。とにかく「どうにかして表現したい」という気持ちがあるんです。 絵は、自分の気持ちをそのまま表現できるんです。悲しいときは悲しい絵を、楽しいときは楽しい絵を描ける。ストレス発散にもなります。描いた後に「あ、自分は今こういう気持ちなんだ」と気づくこともあります。だから、沈んでいるときは自然と暗い色を使ったりします。
今まで描いた絵の中で、一番好きな作品は?
一番最初に描いたライオンの絵です。 僕の中でライオンは優しいイメージがあって、それを表現したくて、いろんな色を使いました。普通ライオンって茶色じゃないですか。でもあえて赤や黄色、青を組み合わせて、目はエメラルド色にしました。 中学校のときに劇団四季の『ライオンキング』を観に行って、その迫力に圧倒されました。その中の歌詞に「エメラルド色に光る目」というフレーズがあって、それがずっと心に残っていたんです。それで最初に描くならライオンだ、と決めました。
体験とこれまでの挑戦
絵を描いていて「やってよかった」「楽しい」と思う瞬間は?
最近あったのは、「昔飼っていた犬が亡くなってしまったので、その子の絵を描いてほしい」という依頼を受けたときです。写真を送ってもらい、描き始めました。お金は「できたらもらいます」というスタンスで進めて、「こんな感じでどうですか」「もっとこうしてください」とやり取りをしながら完成。相手が「ありがとうございます、いくらですか」と言ってくださったので、僕は「1000円でいいですよ」と答えました。すると「そんな破格でいいんですか、決めてください」と言われたんです。僕からは1000円と提示して、あとはチップでお願いしますと伝えたら、喜んで少し上乗せしてくれました。そういう瞬間はすごく嬉しいですね。 ほかにも、いつも行っていたバーのマスターが僕の絵をとても気に入ってくれて、キリンの絵をプレゼントしたことがあります。それをInstagramに投稿してくれて、本当に嬉しかったです。そのときは「この絵を描いたときはこういう気持ちだったんです」とバックストーリーまで語ってしまいました。そうすると「お金払うよ」と言ってくれるんですが、「お金はいらないので見てください」という気持ちになります。 お金が絡むと、下心が出てしまいますよね。だから依頼を受けるときは一旦お金のことを忘れて描く。そして僕からは「1000円でいいです」と伝えて、あとは相手の気持ち次第。そういうやり方が、自分には合っていると思います。
逆に、絵を描いていて「やめたい」と思った瞬間はありますか?
一度だけ、「お前は何を目指してるの?」と言われたときは少しショックでした。友達に「絵を描いてるんだよね」と見せたら、そう言われてしまって。でも、別に何かを目指しているわけじゃないし、好きな絵を描いているだけなんですよね。 それでも、その人にまた絵を見せたら「すごいじゃん」と言ってくれたので、嬉しかったです。それ以外で悲しい思いをしたことはありません。
絵の意味とこれからの目標
あなたにとって絵とは?
一言でいうと、自由です。 社会人になってから、「なんか自由じゃないな」と感じることが多くて。ルールがあって、その範囲内で自由にしなきゃいけない。でもイラストやアートにはルールがない。だからこそ、本当に自分の好きなようにできるのが面白いんです。 社会人になる前は、型にはまった生き方が好きでした。「ルールに従うのが当たり前」という考え方が好きというか、すごく真面目だったんです。小さい頃は田舎で育ったので、コミュニティが狭く、少しでも変わったことをするとすぐ広まってしまう。「変な格好してるよ」という噂もすぐに広がる。でも東京では人が多くて、変な格好をしても誰も気にしない。 田舎ではみんなに合わせた方が生きやすかったけど、東京に来て価値観が変わりました。「人が多いからこそ、自分の表現を自由にしていい」「みんな自分に興味がないから、好きなようにしていい」。そう思えるようになったんです。
今一番大きな目標は何ですか?
個展を開くことです。来てくれるのは知り合いだけでも構いません。とにかくやってみたい。今の作品は全部デジタルなので、それを印刷して額縁に入れ、実際に展示してみたいんです。 需要があるかどうかは一旦置いておいて、自分が「やりたい」と思ったときにやりたい。そこで作品を見て「いいね」と感じてくれる人が一人でもいれば、それで十分です。
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