UMU Tokyo

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音楽創造の芸術:アラン・シムとの対話

Arran Sym

2025年8月23日

音楽創造の芸術:アラン・シムとの対話

スコットランド出身の音楽プロデューサー/アーティスト、アラン・シムは、10代の頃にドラムマシンで遊び始めた小さなきっかけから、やがて音楽を本業とするまでに至った自身の道のりを振り返ります。インタビューでは、創作のプロセスや音楽づくりがもたらす幸福感、そして業界を見つめる彼ならではの視点を語っています。

始まりと初期の影響

少し自己紹介をお願いします。

アランです。スコットランド出身です。音楽プロデューサー、アーティスト、エンジニア…音楽に関わるあらゆることをやっています。

今、音楽でどんなことをしているのか、もう少し教えてください。

16歳か17歳の頃に音楽制作を始めました。最初は趣味で作っていて、1〜2年は自分だけのために作っていました。でもある時、友達が聴いて「ネットにアップしたほうがいいよ」と言ってくれて、YouTubeに投稿したんです。それがきっかけで本格的に取り組むようになり、他のアーティストとも一緒に活動するようになりました。

最初に一緒に活動したアーティストはどうやって見つけたんですか?

当時はブログがすごく盛り上がっていて、Complex、Hypebeast、Noisey、Fader といった新しいアーティストを紹介するブログをよく見ていました。ある日そこから気になるアーティストを見つけて連絡したんです。たくさんトライして、最終的に「一緒にやろう」と言ってくれた人がいて、そこから始まりました。

趣味から職業に変わったのはいつですか?意識が変わった瞬間は?

徐々にプロフェッショナルになっていったので、一言では言えません。最初は完全に趣味でした。その後はパートタイムの仕事をしながら半分は音楽、みたいな時期が続いて。日本に住んでいた時、ある日バイトに行こうと思ったら雨が降っていて「今日は行かない」と決めて、そのままクビになったんです(笑)。それ以降は音楽だけで生きていけるようになりました。

最初の頃、強いモチベーションやインスピレーションはありましたか?

昔から一貫しているのは、「最高の音楽を作りたい」という気持ちですね。

あなたにとって「最高の音楽」とはどういう意味ですか?

自分が一番満足して誇りに思える音楽のことです。自分が本当に好きだと思えるものを作れた時の感覚がモチベーションになっています。

今まで作った曲の中で一番幸せを感じるのは?

大体は最新の曲ですね。振り返って聴いてもまだその気持ちを感じられる曲もありますけど、だいたい「これが最高だ」と思うのは新しい曲です。

その「最高」に到達したらどうなりますか?

作っている時にそういう瞬間があるんです。すごく誇らしくて「これだから音楽をやってるんだ」と思える時ですね。

音楽を作っていて一番良い瞬間は?

曲が完成していなくても、頭の中のアイデアがそのまま音楽になった瞬間ですね。聴き返して「これだ!」と思えるときです。

音楽以外にも3Dアートやウェブサイトを作っていますが、同じ感覚になりますか?

楽しいし満足感はあるけど、音楽とは違います。音楽はドラッグみたいで、完全に没頭できます。他のクリエイティブではその感覚は得られません。

それを見つけられたのは本当に幸運ですね。

そうかもしれないけど…でも、それが音楽ってものなんじゃないですか?

最初に始めたきっかけは何ですか?

小さい頃からギターを弾いたり音楽に興味がありました。2010年のVMA(Video Music Awards)でカニエ・ウェストがMPCというドラムマシンを使っているのを見て「あれは何だ?」と思ったんです。調べたら音楽制作機材だと知って、安いバージョンがあるのも分かって。最終的に誕生日に母が買ってくれて、それで音楽を作り始めました。

今も持っていますか?

いや、もっと良いのを買ったので手放しました。ビートを売って少し貯金できた時に「Maschine」という新しい機材をオンラインで注文しました。学校にいた時に「配送されます」ってメールが来て、昼休みに家に帰って待ってたんです。届いて箱を開けた瞬間、「やばい」って。そこから毎日、母の小さな家のリビングで音楽を作ってました。家族がテレビを見てる横でビートを作ってましたね。

創作の苦悩とマインドセット

音楽制作で一番つらい部分は?音楽家をやめようと思ったことはありますか?

ないですね。一度も。人間をやめようと思ったことありますか?って感じです。意味が分からない。どんな状況でも音楽はやると思います。趣味でも。つらいのは、作るものが全部クソに聞こえる日ですね。音を探しても全部ダメに感じる。何時間もスクロールして『全部最悪だ』ってなる日です。

そういう時はどうやって乗り越えますか?

そういう日は『今日はダメだな』って切り上げますね。でも、役立つのは新しい曲じゃなく、昔の未完成アイデアを仕上げること。そうすると少し気持ちが楽になるし、自信も戻ってきます。最初から作るよりずっと楽です。

他のクリエイターに嫉妬したことはありますか?

嫉妬というより、『この曲、自分が作りたかった!』って思うことはあります。でもそれは嬉しい嫉妬です。その曲が世に出て良かったと思います。誰かが作ってくれて良かった。世界にその曲が存在するのは素晴らしいことです。

その考え方はどこから来ていますか?

まず第一に音楽が好きだからです。音楽のファンであることが自分の原点です。

なるほど。

もちろん自分でも良い音楽を作りたいけど、その前にただ音楽が好きなんです。子供の頃、LAXからサンフランシスコまでバスで8時間、ずっとレッチリを聴いて窓の外を見てたのが最高の思い出です。だから誰が作るかはあまり重要じゃない。良い音楽が聴けるだけで幸せなんです。

音楽の何がそんなに好きなんですか?

すごく純粋なんです。人間の創造力そのもの。何もないところから生まれて、世界中の人が楽しめる曲になる。国籍も宗教も関係なく、みんなビートルズを歌える。それが誰かの頭の中の小さなアイデアから始まったなんて、本当にクールだと思います。

日本での生活と仕事

日本での生活について教えてください。東京はどんな場所でしたか?

日本はとても平和だと思います。特に東京は、混沌として騒がしいのに、不思議と平和なんです。毎日何か面白いことが起こる。でも同時に『秩序ある混沌』という感じで。満員電車で何百万人も詰め込まれても、必ず時間通りに動いて全員が目的地に着く。その安心感が平和に感じるんです。

そういう東京から音楽的なインスピレーションを受けましたか?

はい。東京に住んで日本のアーティストと作った音楽は、普段自分が作るものとは違いました。自分の中の『東京のイメージ』が反映されていたと思います。

日本に行く前のイメージと、実際に住んでからの違いは?

多くの人が日本を理想化して未来的に想像してると思います。でも実際に住んでみると古くてアナログな部分が多い。紙の書類、ハンコ、FAX、銀行振込すら難しい。口座を作るのも大変。『なんだこれは?』ってなります。旅行だと見えない部分ですね。住むと裏側の不便さが見えてきます。

将来の目標と展望

将来はどう考えていますか?

これからも音楽を作り続けたい。新しいジャンルに挑戦して、新しいアーティストとも仕事をして、良い音楽を追求し続けたいです。

40年後の自分の人生はどうなっていると思いますか?

"正直、全然分からないです。1週間先ですら計画通りにならない。1年後も難しい。5年後も難しい。40年後なんて考えられません。

ミュージシャンへのアドバイス

昔の自分にアドバイスするとしたら?

もっと早く音楽ビジネスについて学んでおけと言います。どれだけ良い音楽を作っても、その知識がなければ難しいからです。

初心者へのアドバイスは?同じことですか?ビジネスはどう学べばいいですか?

今はネットに情報がたくさんあります。ただ、事実を知るだけでは不十分で、マインドセットが必要です。知識があっても意識がなければ活かせません。自分にとって重要だったのは『意識を変えること』です。権利管理や契約をきちんと整えておくこと。チャンスが来た時に備えられるように準備しておくことが大事です。

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