動きという言語を通して「自由」を形にするSuzu。幼少期から続けてきたバレエや海外での暮らしを経て、自分を最も自然に表現できる方法として「FREEDOM in Motion」という活動に辿り着きました。社会からの期待に向き合いながらも、自分自身をメッセージの媒体として表現を続ける彼女。その歩みは、自分らしく生きる勇気と、自身の内から生まれる創造性が秘めている可能性を思い起こさせてくれます。
自己紹介
まずは自己紹介からお願いします。
「FREEDOM in Motion」というテーマで、ダンスや身体の動きを通じて“自由”を形にする活動をしています。ジャンルや振り付けに縛られず、その瞬間の感情やエネルギーを大切にしながら表現することを意識しています。
きっかけ
Suzuさんは、どうやって今のキャリアに?
きっかけは、これまでに8カ国で暮らした経験です。最初は16歳でアメリカに交換留学し、その後も大学院や留学、仕事を通して海外で生活してきました。その中で「自分は誰か」という問いに常に向き合ってきたんです。その過程で、言葉よりも身体の動きで表現することが、私にとって一番自然で自由な方法だと気づきました。言葉が通じない国も多く、自分の強みを説明しないと生きていけない場面もありました。そんな中で苦労なしにせずに評価してもらえるのは、身体を使った表現だと気づいたんです。 幼い頃からバレエを続けていて、さらにヨガやピラティスの講師資格も持っています。そうした柔軟性や技術を生かしながら、唯一無二の表現者を目指して「FREEDOM in Motion」を続けています。 最初は趣味でヘアモデルをしていて、カメラに慣れていたこともあります。そこから本格的に活動を広げていきました。
インタビューにご応募いただいたときの肩書きは「モデル」でしたよね。そして先ほど「ダンス」という言葉も出てきました。Suzuさんにとってダンサーとモデルというお仕事は、どのように関わっているのでしょうか?
モデルは基本的に「商品を魅力的に見せ、売ること」が目的になります。だから体型を極限まで細く保つ方も多いんです。 一方で私は、表現を長く続けたいと思っています。だから踊れる体を維持しつつ、健康的で持続可能な方法を大切にしています。共通しているのは、どちらも見る人に感情を呼び起こしたり、問いを投げかけたりできる点です。 ただ、私は海外と日本を行き来する中でカルチャーショックを何度も経験し、その気持ちを昇華する手段として身体表現に出会いました。だから視点は少し違うのだと思います。
なるほど。では現在は、お仕事としてモデル活動をされて、自己表現の活動もされているんですね。
はい。ありがたいことにモデルのお仕事として活動しています。アートとしての活動も仕事としていただけることが増えてきて、自分の自己実現に近い形で取り組めているのは本当にありがたいです。
素晴らしいですね。テーマとして掲げている「FREEDOM in Motion」について、もう少し詳しく教えていただけますか?
最初にいただいた機会は、マレーシアのクアラルンプールで、ペトロナスツインタワーの前で写真を撮るというものでした。旅費は自分で出しましたが、「今の自分を身体で表現したい」と強く思ったんです。 プロのダンサーではないけれど、培った経験を生かせる方法はある。そう考えて活動を始めました。かわいらしい顔立ちのモデルさんや、すらっとした体型のモデルさんはたくさんいます。でも私は「消費されるだけのモデル」にはなりたくなかったんです。だから自分なりの道を切り開こうと思いました。
この活動を始める一番最初のきっかけは何だったのでしょうか?
4歳半から17歳まで続けたクラシックバレエです。毎日練習して本気で取り組んでいたのですが、「学業が第一」という環境だったので、不完全燃焼のまま終わってしまいました。だから「もっと表現したい」という気持ちがずっと残っていたんです。
なるほど。身体を使って表現することが、幼少期からご自身にとってすごく自然なことなんですね。
そうだと思います。日本では「周りに合わせることが美徳」という風潮がまだ強いですよね。私は身体を通じて「自由に生きていい」というメッセージを示したいんです。私は、それを言葉よりも身体を媒体にしてメッセージを届ける方が向いていると感じています。 アメリカから帰国した17歳の頃からダイエットにのめり込んで、心身の健康を崩したこともありました。でも「FREEDOM in Motion」を始めてからは、体を「他人に評価されるもの」ではなく「自分から発信するメッセージを宿すもの」と捉えられるようになったんです。 この活動は、表現で人にメッセージを伝えると同時に、自分自身を支えてくれるものでもあります。
つくる楽しさと難しさ
とても力強いですね。私自身も「周りに合わせて生きている」と感じることがあります。だからこそ、Suzuさんのように「自由に生きる」姿を示してくれる人の存在は、本当に背中を押してくれると思います。次の質問をさせてください。端的に言うと、活動をしていて「楽しかったこと」と「困難だったこと」をお聞きしたいんです。
困難だったことはコマーシャルの、たとえば服を売るための現場などに入ると、どうしてもルッキズムが強い世界だと感じることです。 とても有名なカメラマンさんが 「このモデルさん、汗をかかないんだって。すごいよね」という褒め言葉を言っているのを聞いたことがあるんですが、実際は過度なダイエットで代謝が落ち、汗をかきにくい身体になっているだけなんです。そういうことへの理解がまだ浅いまま、評価が決まってしまうことも多いです。 日本の商業の現場ではどうしても「若くて、目が大きくて、かわいい女性」が強い。商品のためなので仕方ない面もありますが、そうした基準で人が評価されていく現場を見ていると、自分はこの価値観の現場では続けられない、と感じたんです。大きな学びでした。 楽しかったことは、Instagramをポートフォリオとして見てくださった、美的感覚が近い方からお声がけをいただき、一緒に作品づくりができた瞬間です。私は「オーセンティック(本質的・真正)なもの」を見極める目を大事にしたくて、日本では広告やトレンドに左右されがちな中でも、本物の美しさを見る感覚を養いたいと思っています。 その考えに共感してくれたカメラマンさんと、この前は江の島の海へ行って、「自然の恵み」というテーマで小さな作品を撮りました。価値観が合う表現者とつながって、一緒に作って、世に出せる、そんな瞬間が何より嬉しいです。
「本物の美しさ」という言葉がすごく響きました。Suzuさんにとって「本物の美しさ」とは、どんなものですか?
表現者やモデルの価値観や考えが、フィルターなく伝わることだと思います。ダンスを見れば、その人が本当にダンスを好きかどうかは一目でわかるように、見ている人にはきっと伝わる。楽しんでいるかどうか、内面の在り方など、そういうものが、滲み出るのだと思います。
表面的な世界になりがちですよね。ブランドバッグのコピー品じゃないけど、「見た目が同じであればいい」みたいな。
はい。他人からさまざまな基準を押しつけられることも多い。だからこそ「自分の軸で生きている様子」を、そのまま出す力が大事だと思ってます。社会の中で「こう生きるべき」と提示されることもありますが、痛みや嫌な経験も含めた自分の足取りを、ありのまま表現すること、それも「本物」の一部だと感じています。
それって、とても勇気がいることですよね。そうした方向にキャリアを進める上で、不安や葛藤もあったのではないですか?
「FREEDOM in Motion」自体は、もともと得意だったことを活かしているので、そこまで苦ではありませんでした。一般的なモデル活動ではないので、競合の少ない場所を選ぶという意味でも自然な選択でした。 ただ、「モデルとして活動している」と言うことについては、家族にはまだ話していません。安定した仕事の方が親は安心しますし、モデルは「若さや見た目を切り売りする仕事」という捉え方も根強い。堂々と公表するのには勇気がいります。 だから今は、知人に自分の仕事を話す時は「ヘアモデルをしています」「ダンスのポージングをします」くらいに抑えて話すことが多いです。でも、本当は「体を使って自由を表現するアーティスト」つまり表現者として名乗れるよう、自分のブランドを確立していきたいと思っています。
表現を始める前と後で、人生にどんな変化がありましたか?
一番変わったのは、「他人軸」ではなく「自分軸」で選択して生きるようになったことです。私は伝統的な日本の家庭で育った長女で、厳しく、文武両道で、従順であることを求められてきました。放課後はバレエ、ピアノ、習字…と習いごとが多く、ぼんやり考える時間や、自分で何かを生み出す時間が少なかった。母も常に人生のレールを敷いてくれていたので、自分で決める力が育ちにくかったんです。 その後、アメリカの高校に交換留学し、日本に戻ってからは逆カルチャーショックで落ち込みました。そこから居場所を探すように、さらにいくつもの国へ出ていく中で、周囲の期待に合わせるのではなく、自分の心の声に従って、責任を持って決めていくしかないと強く感じました。 もがきながらも、自分の感じていること、考えていることをアウトプットして生きていく、という延長線上に、いまの表現活動があります。自分らしく生きることが、自分の幸せにつながると実感しました。 この活動を通して、他人に合わせて目立たずに生きる勇気ではなく、批判されても、理解されなくても「表現していく勇気」をもらえたと思います。
これまで7カ国で暮らしたと伺いましたが、Suzuさんにとって「このタイミングでカルチャーショックを受けた」という経験は何でしたか?
一番大きかったのは、17歳でアメリカから帰国したときです。アイダホ州というモルモン教徒の保守的な田舎で現地のライフスタイルを吸収して、アメリカ人のように思春期を過ごしました。それで日本に戻ると価値観がまったく合わなくなってしまったんです。 たとえば外にビーサンで出かけると「何その格好?」とすぐ言われて落ち込む。そんなことがたくさんあって、対応の仕方もわからずつらかったですね。そこから「自分にとって生きやすい場所はどこなんだろう」と模索するようになり、大学ではフィンランド、大学院ではノルウェーとデンマーク、その後はブルガリアやドイツで仕事を経験しました。その中で心理学や哲学を学び、自己を内省することで自分の生き方を探してきた感じです。
なるほど。1年という期間で、今までの価値観が大きく変わったんですね。
そうですね。私の場合、16歳まではほとんど自我がない感覚で、自分で決める経験がなかったんです。アメリカで初めて「自分で選ぶ」「個性を見つける」という思春期を過ごしました。そこで人間関係の作り方や友達の作り方を学んだ。だからこそ、その1年間が私にとって大きな転機だったと思います。
日本や東京への想い
1年で本当にたくさんのことを吸収したんですね。ちなみに今は東京に?
はい。活動は今のところは基本的に東京です。
海外でも活動された時期があると伺いましたが、日本という国を選んだ理由は?
大学院を卒業して現地で就職活動をしましたが、ちょうどコロナの時期に重なり、200社近く応募してもうまくいかなかったんです。現地語を話せないアジア人という理由も大きかったと思います。そして、2021年に帰国しました。 帰国後は好きなことをやろうと思い、ヨガインストラクターを始めました。少しずつ日本でコミュニティをつくり、友人も増えました。それで徐々に、日本が生きづらいという気持ちはなくなっていきました。また、9時から5時までの日本の典型的な働き方が自分には合わないことに気づいて、「できないことはできないんだ」と受け入れるようになりました。そうしてできることに集中していくうちに、自分の時間を好きなことで満たせるようになり、東京という街や、日本の良さにも気づけるようになりました。
今までの価値観から距離を置けたからこそ、いまのスタンスにつながっているんですね。
はい、「ミスフィットの先駆け」のような立ち位置なのかなと思います。 東京ではディスカッショングループやスポーツコミュニティに参加しています。仕事でもカメラマンさん、スタジオ、ヘアメイクさん、衣装さんと少しずつつながりができて、人脈が広がってきました。 アメリカから帰国した直後は「ここではみんな自分を殺すようにして生きている」と感じていましたが、いまは生き生きと楽しそうにしている人がたくさんいること、東京や日本が好きな人がたくさんいることが見えるようになって、価値観が少しずつ書き換わっていくのを感じています。おそらく以前の私は、そういう人たちを見ないようにしていたのかもしれません。いまは視野が広がって、同じものを見ていても自分の見方が変わったのだと思います。
これからの道のり
とてもインスピレーションをもらいます。次は、未来の目標や達成したいことを教えていただけますか?
目標は世界中を飛び回り、仕事をすることです。私のような経験とバックグラウンドを持つアーティストはまだ多くないと思うので、身体表現やダンスを通じて、見る人の心も解放できる存在になりたいです。 ただ表面的な感想で終わるのではなく、見た人が「自分も自由でいていい」「自分で選んでいい」と感じられるようなメッセージを受け取ってほしい。私自身が経験したカルチャーショックや自己表現の試行錯誤を糧に、より高いレベルで表現していきたいです。
とても素敵です。私も応援しています。大きな目標を掲げても、そこに向かう道筋が見えなくて迷ってしまう人も多いと思います。どうやって目標に向かって進んでいきますか?
自分に正直であること、真実を語ることを大切にしています。人は誰かに本質や真実を指摘されると、防衛的になって壁を作りがちです。でも本物の本質は、心に届く力があると思ってます。 だから私自身が仮面をかぶらず、価値観に合わないことは言わない。批判を恐れず、自分にとっての本物を伝える。その軸さえあれば、周囲の状況がどう変わってもぶれないと思うので、そこを大事にしています。
強くて、かっこいいですね。これからの道のり、挑戦の連続だと思います。リスクのある選択で、やるかやらないか迷う時、怖くてもやってみる時、どんなふうに判断していますか?
心身を崩して、いったん全部をリセットするような状態になったことがあります。その時に、これまでの価値観を手放せたのが大きかったですね。 一番大きいレッスンは「他人は私の幸せに責任を持ってくれない」ということ。そして、人は良くも悪くも私のことをそれほど見ていない、という事実です。結局は自分の人生を自分で舵をとり、決めていくしかない。 将来が怖くても、目の前にあることを積み上げる。できれば好きなことで積み上げる。その方が後悔がないと考えて、基本的には好奇心に導かれるまま、やりたいことはやると決めています。
届けたいメッセージ
乗り越えた人の言葉だからこそ、重みがあります。最後に、私が一番好きな質問なのですが、過去の自分に伝えたいメッセージはありますか?
子どもの自分には「上の人の言うことをうのみにせず、自分の心の真実に従いなさい」と伝えたいです。子供の私は従順な性格だったので、大人の自分が言ったら従っていただろうなと思うんです。 もう一つは「過程を信じなさい」。結果は一日で出るものではありません。誰かが一年でできたことも、自分には四、五年かかるかもしれない。でもそれでいい。私のしているのは自己表現だから、人と比べる必要はない。とにかく自分のプロセスを信じて生きなさい、と言いたいです。
結果が出ない日が続くと落ち込むこともありますよね。そんな時、どうやって立て直しますか?
まずは水分、食事、運動を意識して、体調を整えます。その上で、継続は毎日でなくていい、と自分のことを許すのが大事かなと思います。 ショート動画を投稿し始めたんですが、最初は毎日だったのが、最近は三日に一回、五日に一回のこともあります。でもそれでいいんです。誰のためにやっているのかといえば、自分のためですから、そこに立ち返れば続けられます。 特に女性は体調のサイクルもありますし、できる日とできない日があるのは当たり前かもしれませんね。自分に甘く、長い目で見ていいんだって自分に言い聞かせてます。
そうですね、ロングランでいきましょう。最後に、世界に向けて一言お願いします。
フェスティバルや展示の場で、ダンスや身体表現のパフォーマンスをどんどん披露していきたいです。多文化に触れ、さまざまな文化に根ざした表現スタイルを取り入れながら、より良い、より自由な生き方を届けにいきます。
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