UMU Tokyo

umu(うむ)は、東京にゆかりのある国内外のクリエイターにインタビューし、そのリアルな声や生き方を日英バイリンガルで発信するインディペンデント・メディアです。

完璧を求めず、実験し続ける。フィルム写真が導く創作の道

Raufan

2025年11月8日

完璧を求めず、実験し続ける。フィルム写真が導く創作の道

UI/UXデザイナーとして働きながら、フィルム写真を通して日々の暮らしや感情を記録し続けるRaufan。SNSやSubstackで作品や思考を発信し、フォトブックや展示など、表現の幅を広げています。 創作の原点にあるのは「記憶を写真で残すこと」。本業のプロダクトデザインの経験が影響する独自の視点や、完璧よりも実験を重ねることを大切にする姿勢に、彼の創作哲学が表れています。フィルム写真とともに生きる彼の現在地と、これからの夢を紐解きます。

自己紹介

ご出身や現在のお仕事など、自由に自己紹介をお願いします

こんにちは!Raufanと申します。SNSでは「notmegapixels」という名前でも活動しています。インドネシア出身で、現在は東京に暮らしています。 普段はデジタルプロダクトデザイナー(UI/UX)としてフルタイムで働きながら、趣味としてフィルム写真にも取り組んでいます。その記録をYouTubeで発信したり、Substack(ニュースレターを発行できるオンラインプラットフォーム)に文章として残したりしています。 いつかはフィルムフォトグラファー、そしてクリエイターとして、フルタイムで活動していけたらと思っています。

自己紹介
自己紹介

きっかけ

写真を始めるきっかけは何でしたか?

写真との出会いは、今から8年ほど前のことです。友人が持っていた小さくてかわいいポケットフィルムカメラ、Olympus Mju IIを貸してくれて、何枚か撮らせてもらったのが最初でした。1週間後、現像した写真を見せてもらったとき、その中の一枚が、撮ったその時の気持ちをそのまま思い出させてくれたんです。あの感覚がすごく不思議で、同時にすごく心に残りました。それがきっかけでフィルム写真に夢中になっていきました。 自分が撮った写真を通して、記憶や気持ちがよみがえる。その感覚こそが、写真を始めた理由であり、今も続ける大きな原動力になっています。

フィルムフォトグラファーとして最初のプロジェクトを覚えていますか?そのときの体験について教えてください。

フィルムフォトグラファーとして最初の本格的な仕事は、友人たちの結婚式の前撮り撮影でした。ちょうど2件続けて依頼があり、正直とても緊張していました。フィルムで撮りたい気持ちは強かったものの、「もし失敗したらどうしよう、台無しにしてしまうかもしれない」という不安もありました。それでも当時の自分は思い切って挑戦することにしたんです。もちろん、念のためプランBも用意しておきました。 結果は想像以上に良くて、みんなが喜んでくれたのが本当にうれしかったです。自分自身も誇りに思える作品になりました。 もう一つの意味での「最初のプロジェクト」は、自分の初めての写真集と個展です。あのときの体験は、今思い返しても夢のようです。最初のフォトブックは「日本で暮らす」という自分の夢をテーマにしたもので、実際に日本へ移住した後、その延長線上で初めての個展も同じテーマで開催しました。 日本の素晴らしいところは、誰であっても展示や本の出版にチャレンジできる環境があることだと思います。少なくとも私はそう感じています。出身地のインドネシアと比べると、日本は写真に関してずっとオープンで、挑戦しやすい場所です。だからこそ、ここで活動できることに大きな魅力を感じています。

きっかけ
きっかけ

創作や仕事のこと

キャリアやスキルを高めるために、どのように学びや経験を積み重ねていますか?

フィルム写真では、自分の暮らしや物語、そしてその時の気持ちを写真として記録し続けたいんです。その過程で、同じような思いを持つ人や、まったく違う背景を持つ人たちと出会い、つながることができました。写真を撮ることそのものがフォトグラファーとしてだけでなく、一人の人間としての成長にもつながっていると感じます。 これはどんなクリエイティブな活動にも共通することだと思うのですが、写真の好きなところは、ひとつひとつのプロセスの中で必ず新しい発見や学びがあることです。

気分が落ち込んだり、やる気が出ないときは、どんなふうにモチベーションを保っていますか?

燃え尽きてしまったことは、これまでにもあります。そのときに自分にとって効果的だったのは、いったん立ち止まることでした。日々のルーティンから距離を置いて、「なぜ自分はこんな気持ちになっているんだろう」と問いかけてみたんです。 原因はSNSのスピード感でした。「常に情報を追いかけて、毎日投稿しなければならない」というプレッシャー。だけどそれは、フィルム写真が教えてくれる感覚とはまったく逆のものでした。そこで少し方向を変えて、Substackで文章を書くことを始めたんです。振り返ってみると、それは私のクリエイティブな道のりの中で一番良い選択のひとつだったと思います。新しい人たちとつながり、意味のある対話が生まれ、いいねを追いかけるのではなく、物語や気持ちをシェアすることに意識を向けられるようになったんです。 なので、私の場合は、一度立ち止まって視点を変えることが、いちばん効果的なんです。そうすることで、また前を向こうと思えるようになります。

これまでに多くの挑戦やリスクがあったと思いますが、難しい状況に直面したときは、どのように決断をしていますか?

おもしろいことに、この考え方は本業のプロダクトデザインの影響が大きいと思います。デザインの仕事では必ずユーザーテストやインタビューを通してアウトプットを検証します。その習慣が、知らないうちに自分のアートや写真のプロジェクトにも入り込んでいました。 私は「まず作って公開してみて、そこで得た気づきを次に活かす」というやり方が好きです。完璧になるまで待つよりも、学びながら繰り返し改善していくプロセスの方がずっと価値があると感じています。 実際、クリエイティブ仲間の多くは作品を「仕上がった」と思えるまで磨き込んでから発表するのが普通で、私のやり方は少し珍しいかもしれません。でも私にとっては、不完全でもまず世に出してみることが、長い目で見ればより良い作品を生み出す近道だと思っています。

仕事や創作をするうえで、これだけは欠かせないというアイテムはありますか?

フィルムカメラです😆「憧れのカメラ」という意味では、ずっとやってみたいと思っているのがフィルムでのパノラマ撮影です。撮った写真を自分で現像して、最終的にパノラマのプリントに仕上げてみたい。それが今の小さな夢ですね。

創作や仕事のこと
創作や仕事のこと

つくる楽しさと難しさ

フィルムフォトグラファーとして活動している中で、どんな瞬間に一番幸せを感じますか?

私にとっては、フィルム写真のプロセスそのものが純粋に楽しいんです。 もちろん、画質や手軽さで言えばデジタルカメラの方が勝っていると思います。でも私にとってフィルムは、仕上がりだけが目的ではありません。少しありきたりに聞こえるかもしれませんが、「撮るまでの過程」こそが一番意味がある気がします。フィルムを装填する瞬間から、現像やスキャンを待つ時間まで、そのひとつひとつが楽しいんです。 そして、それを写真集やZINE、プリントのように形にして、誰かが共感してくれる瞬間。その体験こそが、何ものにも代えがたい価値だと思っています。だからこそ続けたいし、やっていて良かったと心から思えるんです。

一方で、これまでに特に大変だったことや、もう続けられないと瞬間はありますか?

やめたいと思ったことは特にありません。恐らくそれは、フィルム写真が自分にとって仕事というより「表現の場」だからだと思います。現実から少し離れられる場所のような存在で、だからこそ始めてから8年経った今も変わらず楽しめているんだと思います。

キャリアを築く中で、どんな迷いや葛藤を感じてきましたか?

今いちばん難しいと感じているのは、アーティストとしての感性とビジネスとしての考え方のバランスを取ることです。フィルム写真で生計を立てていくためには、作品を販売したり、クライアントを見つけたりと、お金が必要になります。 でも、お金に結びつきすぎると、趣味としての楽しさが少しずつ薄れて、仕事のようになってしまうと思います。だから今は焦らず、少しずつ試しながら、自分なりのバランスの取り方を探しています。いつか、アーティスト兼フィルムフォトグラファーとして本格的に活動できるようになるのが目標です。

つくる楽しさと難しさ
つくる楽しさと難しさ

価値観の定義

Raufanさんにとって「写真を撮ること」とは、どんな意味がありますか?

私にとって写真は、自分自身や自分の物語を記録し、そこから人とつながるための手段です。写真というアートは、自分を成長させてくれるものであり、振り返ったり、分かち合ったり、自分をより良くしていくきっかけにもなっています。 また、写真を通して、他の人の「窓」から世界を見ることができるのも魅力です。その人が見ている景色や体験していることを、自分も少しだけ共有できる。 一番おもしろいのは、同じカメラを使って、同じ場所で、同じ時間に撮ったとしても、出来上がる写真がそれぞれまったく違うこと。それは、みんながそれぞれ違う視点や観察の仕方を持っているからです。だからこそ、写真は奥深くて、やめられないんだと思います。

その経験は、あなたの人生にどんな影響を与えましたか?振り返ってみて、この道を始める前と今とで、いちばん変わったことは何だと思いますか?

写真を通して、自分のものの見方が大きく変わりました。昔は物事を白黒はっきりと捉えがちだったんですが、今は「絶対的な正解や不正解なんてない」と思えるようになったんです。人はみんな違っていて、自分がつくるものはすべての人に届くわけではないかもしれない。でも必ず誰かには届く。そのことに気づけたのは大きな収穫でした。

価値観の定義
価値観の定義

日本や東京への想い

あなたにとって東京はどんな場所ですか?東京が好きですか?

東京が好きですし、日本での暮らしも大好きです。クリエイティブやフィルム写真の文脈で考えると、キャリアを築く環境は地元や母国よりもずっと恵まれていると感じます。グループ展の機会が多かったり、本を出版する方法が整っていたり、個展を開く場もある。これまでの経験は本当に充実していて、これから先がとても楽しみです。

日本や東京への想い
日本や東京への想い

これからの道のり

これからどんなことを実現したいですか?そして、思い描くいちばん先の自分の姿はどんなものですか?

いい質問ですね。私は、夢を語ることがすごく好きなんです。自分にとっての最終的なゴールは、フィルム写真だけで生活できるようになること。年に1〜2冊の写真集を作ったり、展示をしたり、自宅に暗室をつくったり、作品を販売したり……そんな活動を続けていきたいと思っています。 さらにその先の夢としては、写真で生計を立てられるようになったら、日本の地方に移住したいんです。今のところ、愛媛か岐阜がいいなと思っています。そこで暮らしながら、時間の40〜50%くらい(1日4時間ほど)は地域に還元したい。デザインや写真、英語、コンテンツ制作、アートを若い世代や地域の人たちに教えるのもいいですし、まったく違う形で農作業を手伝ったり、地域のプロジェクトを支援したりするのも素敵だと思います。 私のビジョンは「写真で生きる」だけじゃなく、「写真と共に生きる」こと。そして、その中で誰かに還元できる生き方をしていきたいんです。

大きな目標に向かう中で、自分なりのペースや進め方はありますか?

さきほどもお話ししたように、創作の楽しさを失わないようにしながら収入を得る方法をいろいろ試しているところです。 来年の初め(1月)には2冊目の写真集を出版する予定で、同じ年に2回目の個展も計画しています。これからは、自分の写真をもっと継続的に「かたちある作品」として発表していきたいと思っています。

これからの道のり
これからの道のり

届けたいメッセージ

この道に進むか迷っていた頃の自分に、今のあなたから伝えたい言葉はありますか?

とにかく続けること、そして恐れずに何かを生み出してみること。これまで選んできた道も、経験してきたことも、すべてが今の自分につながっています。そのことに心から感謝しています。

届けたいメッセージ
届けたいメッセージ

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