UMU Tokyo

umu(うむ)は、東京にゆかりのある国内外のクリエイターにインタビューし、そのリアルな声や生き方を日英バイリンガルで発信するインディペンデント・メディアです。

ヴィンテージから広がる、サステナブルなクリエイティブキャリア

Joy

2025年9月14日

ヴィンテージから広がる、サステナブルなクリエイティブキャリア

古着のオンラインショップを運営しながら、クリエイティブディレクターとしての活動も広げているJoy。 一点物の古着に宿る物語を写真やスタイリングで可視化し、“長く着ること”や“ものを大切にすること”をテーマに活動を続けています。 会社員として働きながらも、自分の表現を形にしたいという思いで走り出した彼女。撮影や仕入れ、仲間との出会いを通じて、自分の世界を少しずつ広げてきました。 「決断は自分らしく」という信念とともに、古着とストーリーテリングを軸に描くキャリアの軌跡を追います。

自己紹介

まずは自己紹介をお願いできますか?

Joyといいます。いまはオンラインで古着を販売しています。あわせて、クリエイティブディレクターとしての活動も少しずつ始めようと思っていて、いろいろ試しているところです。

普段はお仕事もされているんですよね。

はい。平日は一般企業で会社員をしています。職種はクリエイティブ業界とは少し離れているのですが、昔からカルチャーや服が好きで、特に古着に惹かれてきました。趣味から始めたのがきっかけで、古着を使ってスタイリングし、撮影して“物語を可視化する”ような活動を始めました。

“ストーリーを作る”という意味で、クリエイティブディレクターに挑戦している、ということですね。

そうですね。まだ駆け出しですが、少しずつ形にしている最中です。2022〜23年ごろに最初は撮影から始めて、フリーランスのフォトグラファーの友人と作品撮りをしたり。一般の方に向けて「古着を使ったスタイリング+撮影します」という小さなセッションもやっていました。今は一旦お休みしていますが、撮り方や見せ方を模索し続けています。服そのものだけでなく、写真を通して“どう物語るか”を大切にしています。

きっかけ

この活動を始めた一番最初のきっかけは?

シンプルに、古着が好きだったからですね。古着ってストーリー性が強いじゃないですか。「誰が着ていたんだろう?」と想像が広がる。その“語り”に魅力を感じて、撮影で物語をつくることが楽しくなりました。 古着は一点物だからこそ、その瞬間に誰かに見せる“二度と同じにならない時間”が生まれる。その尊さや面白さを写真に閉じ込めて伝えたい、と思ったのが始まりです。

具体的な“ストーリー”の例も聞いてみたいです。どんな出会いややり取りがあったんですか?

私は普段の仕事でバイヤーのように「外から物を仕入れる」業務があるんです。その延長で古着も、ヨーロッパを中心に現地でピックしたり、旅先で探したり、Instagramで見つけてDMで交渉したりします。 「日本に送るのは初めて」という小さなヴィンテージショップに出会ったときは、すごく喜んでくれて。「日本っていいね」と話しながら送ってもらったこともあります。 たとえば50代の女性から買った服は、「20代の頃、恋をしていたときに着ていたの」と教えてくれました。そういう背景を聞くと、撮影のコンセプトにも反映したくなるんです。もちろん私なりの解釈や加工も入りますが、その人の記憶が新しい物語へつながっていく感じが好きなんです。

販売を「やってみよう」と決めたターニングポイントはなんだったんでしょうか?

撮影を続けるための資金を少しでもつくりたかったのと、私のなかだけに留めずに「物語で選んでくれる人」を増やしたかったからです。買ってくれた人が、その後の生活の中で物語を引き継いでくれたら素敵だなと思うんです。 とはいえ在庫や採算の難しさは常にあります。うまくいかない日も多い。でも、試行錯誤しながら続ける価値はあると思っています。

最初に売れたアイテム、覚えていますか?

友人が最初の購入者でした。チェック柄のワンピースのセットアップで、撮影でもメインで使った思い入れのある一着です。送り出すときは、「大切にしてもらえますように」という気持ちになりますね。撮影に使った服には小さな読み物を添えて発送することもあります。背景や意図を知ってから着てもらえると、より愛着が湧くと思うんです。

つくる楽しさと難しさ

古着屋さんとして「やっていてよかった」と思う瞬間はどんな時ですか?

一番は、やっぱり購入してもらえたときです。自分の手から離れて、次の持ち主の生活に入っていくのが嬉しいんです。あとは、仕入れのときですね。誰がどんな場面で着るかを想像しながら選ぶのが本当に楽しいです。シチュエーションを思い浮かべつつ、ストーリーが立ち上がる服を探しています。

反対に、いちばん大変だったことも伺っても良いですか?

自分の立ち位置が揺れることです。古着屋としての顔と、クリエイティブ(撮影・ディレクション)をしたい気持ちの両立。戦略的な売り方やビジネス面の知識が足りないと思って、ビジネススクールに通って走りながら学んでいる最中です。 始めた頃は「本当に売れるのかな」という不安も大きかったし、撮影をどう事業に結びつけるかも見えづらかったです。いまも在庫や採算のことで悩む日はありますが、少しずつ改善して続けるつもりです。ロングランで、試しながら進む、そんな感覚です。

価値観の定義

少しコンセプチュアルな質問です。Joyさんにとって「クリエイティブ」とは?

そうですね…誰でもなれるもの、という感覚があります。みんながそれぞれの方法で表現できるし、してほしい。私は普段は会社員をしていて、いわゆる“フルタイムのクリエイター”ではないけれど、撮影や作品づくりを通して、感性や「いま形にしたいこと」を外に出せるのは本当に幸せだと思っています。だから、思いを表現できる“場所”があることが大事ですね。

活動を始める前と後で、どんな変化がありましたか?

前は個人的に物語を書いたり、頭の中で構想することが多かったんです。2022〜23年に作品撮りを始めてからは、モデルさんを集めたり、フォトグラファーと組んだり、チームでつくる機会が増えました。ひとりでやるのとは違う反応や化学反応が生まれて、刺激し合えるのがすごくいい。チームをつくるのは大変だけど、その価値を強く感じました。

事業としての古着販売に、どんな思いを込めていますか?

環境や消費のことにも関心があるんです。かわいいから買う、だけじゃなくて、長く大切に着るという姿勢を伝えたい。物を大事にすることは、人を大事にすることにもつながる気がしていて。古着を通じて、そういうメッセージを発信したいんです。

その“長く着る”という価値観は、いつ頃から?

子どもの頃から自然にですね。祖母や母の服を受け継いで着る機会が多くて、「服って強いな、長持ちするな」と感じていました。祖母が30代の頃に着ていたワンピースや、当時のアクセサリーも譲り受けて。世代をまたいで物が生きる感覚が、私のベースになっています。

日本や東京への想い

販売はどんな形で?拠点は東京でしょうか。

基本はオンラインです。たまに友人のバーなどでポップアップをやることもありますが、今年はできていないんです。拠点も販売場所も主に東京です。

東京について、どんな思いがありますか?

古着だと下北沢など人が集まりやすい場所が多くて動きやすいですね。いろんな人がいて、面白い出会いが生まれやすい街だと思います。

これからの道のり

今後の規模感や展開のイメージはありますか?

東京での活動は続けつつ、東京以外でも挑戦してみたい気持ちがあります。仕入れ先を増やして、面白い古着をもっと発見したい。最近はショップ用とクリエイティブスタジオ用でInstagramのアカウントを分けました。ショップでは販売、スタジオではスタイリングや撮影、コンセプトづくりなどを提案していくつもりです。 物理的なスタジオはまだないので。まずは相談ベースで、一緒にコンセプトを考えたり、必要に応じてスタイリングや撮影を行います。たとえば会社のSlackアイコン用のポートレートを撮る、といった小さなニーズにも応えたい。古着を使ったスタイリング提案もできます。

古着ブランド兼クリエイティブスタジオとして、どんなユニークなところがあるんですか?

まずはその人に“似合う・好き・続けて着られる”の三つを丁寧にマッチさせること。単に可愛いから、だけで終わらせず、ケア方法や洗い方まで含めて「長く着る前提」で提案したいんです。購入して終わりではなく、気持ちごと長く寄り添う。そういう体験を一緒につくれたら、と思っています。

今後の目標は?

仕入れ先をもっと広げて、ピック先の方々と“物語の仲間”として関係を深めたい。最近はスウェーデンのビジネススクールで、ビジネスとクリエイションの間にある視点(デザイン思考など)を学んでいます。現地に滞在したとき、Instagram経由でモデルさんとつながって、初めて海外で撮影もしました。カメラマンがいない日は自分で撮影も担当して、表現の幅が広がりました。

学び方や経験の積み方で、意識していることはありますか?

「まずやってみる→つまずいたら聞く→必要なら学ぶ」です。学校のクラスメイトに現役のCDさんがいたりして、プロセスを質問して自分に落とし込んでいます。必ずしも学校でなかったとしても、人に助けを求める勇気が大事だなと感じます。

新しい挑戦の意思決定はどうしているんですか? リスクは怖くないですか?

はい、怖いです(笑)。だからこそリスクヘッジを前提に進めます。会社員を続けながらクリエイティブを育てる“二本柱”で、無理せず継続できるようにしています。思い切って会社を辞めて一本で走るのが合う人もいるけれど、私は両立型が性に合っているなと感じています。

届けたいメッセージ

モチベーション維持のコツ、あればぜひ教えてください。

私もモチベーションが上がらないこともたくさんありますが…ひとつ言えるのは、人に話すことですね。やりたいことを口に出すと、アドバイスや協力をしてもらえたり、次のワクワクにつながる。言葉にすることで気持ちが軽くなったりチャンスが近づく感覚があります。

素敵です。最後に、過去の自分や読んでいる方へのメッセージがあればお願いします。

過去の自分に伝えたいのは、「一つに決めなくても大丈夫」ということです。 当時は、“これを極めなきゃいけない”“専門性を一本に絞らなきゃいけない”と無意識に思い込んでいたんです。でも本当は、一つだけを追いかけなくても、やりたいことを少しずつ同時にやっていい。むしろその方が自分らしさにつながると今は感じています。 表現というのは、何かを学ぶというよりは、実際に手を動かし、試しながら少しずつ形になっていくものだなって思います。 私のクリエイティブは、表面的な速さより“自分の軸でじっくり決めること”を大切にしていて、皆もそうだったらいいなと思います。服選びも同じで、長く着られるか、環境や気持ちにとって良い選択か、じっくり考えて“賢く選ぶ”ことが、結局いちばん自分らしさを守ります。 私のブランドの名前は「The Wise」です。賢い選択を重ねていこう、という思いを込めました。服に宿るストーリーを綴っています。ぜひサイトを訪れて、そのストーリーを見てみてください。そこから、物語が続いていくはずです。

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