UMU Tokyo

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マーケティングからデザインへ:創造力と挑戦で切り拓くフリーランスの道

Amy(8MYStudio)

2025年9月14日

マーケティングからデザインへ:創造力と挑戦で切り拓くフリーランスの道

デザインとマーケティングを両軸で活躍するフリーランスクリエイターのAmy。SNS運用からWeb制作、紙媒体まで幅広く手がける一方、独学で始めた3DアートをInstagramに投稿したことがきっかけで、海外での展示も経験した。 会社員時代の困難を乗り越え、信頼できるクライアントと直接つながるフリーランスの道を選んだ彼女。今では「楽しくつくる」ことを大切にしながら、ブランディングや新しい表現に挑戦し続けています。そんな彼女のキャリアシフトと、デザインが人生にもたらした大きな変化を掘り下げます。

自己紹介

自己紹介をお願いします。

「8MYStudio」という屋号で活動していて、フリーランスのデザイナー兼マーケターとして仕事をしています。主にSNS運用の代行や、企業・個人事業主さん向けのチラシやリーフレット、Web制作などを行っています。 日本生まれ・日本育ちですが、父がイギリス人ということもあり、幼い頃からグローバルな環境で育ちました。大学では中国語を履修し、パートナーが韓国人なので韓国語も話します。そういった環境で多様な価値観を吸収してきたことが、デザインをするときの視点や発想にもつながっていると思っています。 個人の活動では3Dアート制作もしていて、始めてすぐの頃にトルコ・イスタンブールのカフェ&アートギャラリーで作品を展示させてもらいました。星座や個性をテーマにした作品で、短い期間ではありましたがとても良い経験になりました。

経歴がすごく幅広いですね。

過去にはセールスや販売員の仕事もしていました。そこから徐々にデザインの道に進むようになったんです。

きっかけ

どうやってデザインにキャリアを移していったのか伺ってもいいですか?

最初はセールスの仕事をしていました。コミュニケーション力を評価いただいたことや、大学でもそういった専攻だったことがきっかけなんです。不動産会社に勤めていたとき、中国語を活かしてSNS広告を運用してほしいという依頼がありました。その仕事を通して広告の面白さを知り、SNSマーケティングの会社に2年間勤めることになりました。 そこでデザインに本格的に出会いました。もともと好きではあったものの、自分で実際に取り組んだことはほとんどなかったんです。でもクライアントの要望に応える形でデザインを作るうちに評価されるようになり、自信がつきました。SNSのクリエイティブやディレクションも任されるようになり、自然とデザインの領域に進んでいった感じです。

なぜフリーランスという働き方をを選ばれたのか、伺ってもいいですか?

今年の7月からなんですよ。できたてホヤホヤのフリーランスです。実は私、今まで上司に恵まれなくて。会社勤めをしていた頃、マーケティングの仕事をしていたときもそうなんですが、 組織の中で自分らしさを発揮しづらい環境であることが多かったんです。 組織の中で、自分の貢献が適切に認識されにくい環境だったんです。自分が手がけた成果物についても、なかなか個人の功績として評価される機会が少なくて。そんな状況が続く中で、「それなら自分のアウトプットを直接クライアントに届けたい」と思うようになりました。実際、クライアントから直接評価いただけることが嬉しかったですし、その方が自分に合っていると思いました。 また、自分の思いやクライアントの思いをダイレクトに受け取って、良い関係を築けるような働き方をしたいとも考えていました。さらに、将来的に海外での生活も視野に入れているので、場所に縛られない働き方としてフリーランスになることにしました。 その会社での経験も、今思えば人生の勉強になったと思いますし、似たような状況で頑張っている方もきっといらっしゃると思うんです。困難な時期を乗り越えた先には必ず新しい可能性が待っている、そう信じて前進する姿勢を大切にしたい。そんな自分の歩みが、どなたかの励みになれば嬉しいですね。

読んでいる人の背中も押してくれる言葉だと思います。フリーランスを始めて2ヶ月くらいですよね?

はい。2ヶ月くらいですけど、もう世界が変わったように感じています。見る景色も変わりましたし、一緒に仕事をしてくださる方々との信頼関係がとても大きいですね。楽しく仕事ができていることが一番です。 楽しくやることって本当に大事で、クリエイティブにも表現にも全部つながります。パフォーマンスも上がるし、チームの雰囲気が良ければさらに良いものが作れます。だから私は「自分が一緒にやりたいと思えるクライアント」と関わることを大事にしています。 過去には困難なことも多かったですが、少しずつ良くなっていっていると感じています。

Amyさんにとって、楽しく仕事をする要因ってなんだと思いますか?

一番は「人」じゃないでしょうか。環境を大事にすることですね。自分で環境をつくりにいくこともそうですし、「この人とは一緒に続けていきたい」と思える関係を築くこと。お互いに自然体で信頼し合える関係があれば、楽しく仕事ができると思います。 自分のモチベーションを高めるなら、やっぱり好きなことをすることだと思います。私の趣味は犬と戯れることなんですが、2匹飼っていて、本当に癒されます。 あとは結局デザインに戻ってきますね。本当に好きでやっているので、趣味も仕事もデザインなんです。気づいたらずっとパソコンの前にいて、視力や腰、頭や目が大丈夫かなって心配になるくらい(笑)。でも、それぐらい夢中になれるものがあるのは幸せなことだと思っています。あとは家族やパートナーの存在も大きいです。ありがたいことに良い家族とパートナーに恵まれているので、すごく支えられています。

つくる楽しさと難しさ

マーケティングから入ってデザインに進まれたのは珍しいですね。やっていて楽しいのはどんな部分ですか?

マーケティングとデザインはすごく相性がいいと思っています。ブランディングに必要な「動線作り」をデザインでしっかり形にすることで、クライアントに安心感を与えられるんです。「ブランドを理解している」と感じてもらえることを大事にしています。 デザインの楽しさはやはりブランディングの部分です。自分の考えるデザインと、クライアントが求めるデザインをすり合わせながら形にしていく。そのプロセスにすごくやりがいを感じます。 また、チームと一緒に制作する中で、どうすれば人にうまく指示が伝わるか、どうすればより良いクリエイティブが生まれるかを考えることも楽しいです。ものづくりに限らず、考え方や働き方の中にも「デザイン的な思考」が広がっているように感じます。

一番大変だった経験や「もう無理かも」と思ったことがあれば教えていただけますか?

そうですね。クリエイターやマーケターとして活動を始めてからの話ですが…。私は「大変」とあまり思わないようにしているんです。もちろん難しいことはたくさんありますが、それも前提としてやっているので「つらいからやめたい」とは思わないですね。 ただ、マーケティングでのKPI設定は苦戦します。ターゲット層によって動線設計がまったく違うので、どうやって数字を上げるかはすごく難しいです。例えば「どんなサムネイルなら数値が伸びるか」とか、そういうことを日々分析して考え続けます。 大変ではあるけれど、それを「どうしたらこうなるんだろう」と考えるのは同時に面白くもあって。結局「大変だけど楽しい」んです。だから、つらいと思ったことはなくて、むしろやりがいを感じています。

素敵ですね。ありがとうございます。キャリアをフリーランスにシフトするっていうのは、やはり大きな転機ですよね。そういったシフトのタイミングで、不安や葛藤はありましたか?

そうですね。不安はもちろんありました。正社員からフリーランスに転身するのって、やっぱり全然違うじゃないですか。でも私は「やると決めたらやる」タイプで、思い切って飛び込みました。 正社員のときから自分の強みや売りになる部分を分析して、ポートフォリオも準備していたので、転身してからは営業にどんどん動けました。そこからクライアントさんと巡り合えて、横のつながりも広がっていって。今は本当にいい状態になってきています。

丁寧に考えて、積み重ねてきたからこそ今があるんですね。

そうですね。あとは笑顔が増えました。以前は職場環境が自分に合わず、家に帰ると気持ちが沈んで、なかなか部屋から出る気力が湧かないほど落ち込んでいたんです。でも、そこから少しずつ立ち直って、自分なりに前向きに取り組んできました。負けない、と思っていました。

お仕事をしていて、このためにやっていると思えることは何でしょう?

常に自分や周りの人と楽しく過ごすために働いています。家族やパートナーと過ごす時間はもちろんですが、犬が大好きなので、犬たちに美味しいお菓子を買ってあげたり、一緒に旅行したり。そういう小さな幸せのために頑張ってます。 そして、自分自身のキャリアアップのためでもあります。

なるほど。キャリアとして、どんなところを目指していますか?

頼られるクリエイターになりたいです。ただ敷居が高い存在ではなく、同じような悩みを抱えている人の助けになったり、希望をもたらせるような存在に。 「それわかる」って共感してもらえるような、そんなクリエイターになりたいんです。デザイナーという肩書きにとらわれるのではなく、同じような境遇の人たちを少しでも前向きにできるような。ポジティブなマインドをつくるきっかけになれる人になれたら嬉しいです。その人たちがまた新しいつながりを生んで、さらに誰かをハッピーにしていく。みんなが幸せになれたらいいなと思っています。

価値観の定義

抽象的な質問なんですけど、デザインとは何か、とか。デザインがあなたの人生にどんな影響を与えたのか。始める前と後で何が変わったのか…。もしデザインに出会ってなかったら、今どんなことをしていただろうか、とか、そういう価値観の部分を伺いたいです。

デザインを始める前は、本当に普通というか、そこまで「クリエイティブな人間」ではなかったですね。思考もまっすぐで真面目、という感じでした。でもクリエイティブに関わるようになって、横のつながりが広がっていったときに、「こういう見方もあるんだ」とか「こうしたらもっと良くなるんだ」って気づけるようになりました。視野が広がったというか。 それに、自分のスタイルが確立できたことも大きいです。私は元々、人のクリエイティブを見るのも好きで。「この人はこういう表現をする」「私はこういう表現をする」っていうのがはっきりしてきましたね。

影響を受けた方や好きなデザイナーはいますか?

いっぱいいます(笑)。多分、その全部が混ざって今の自分のベースになっているんだと思います。日本だけじゃなく、韓国や中国、ヨーロッパのデザインもよく見ます。全然違うんですよね。 インテリアも好きで、マリメッコなど北欧のデザインもよく参考にします。グラフィックデザインももちろん好きです。私の意見ですが、デザインって「これが正解」みたいな決まりがないじゃないですか。チラシにはこのデザイン、SNSにはこのデザイン、というふうに決まっているわけではなくて。それぞれの良さを取り入れて、「この人のデザイン、いいな」って思いながら吸収しています。 それから、名前を思い出せないんですが…(笑)、アーティストのアルバムジャケットやK-POPのジャケットを手がけている方で、3D作品をつくっているデザイナーがいて。その方の作品もすごく好きで、よく見ています。

3Dを始めたのは、お仕事の必要性からですか?

完全に趣味でした。独学でYouTubeを見ながらやってみたり、自分の感覚を頼りに作っていました。 最初は日本語のポートフォリオがなくて、英語のポートフォリオから作り始めたんです。マーケティング会社で困難だった時期に、「何か実績が必要だ」と思って。インパクトのあるものを作ろうと考えて、最初に手をつけたのが3Dでした。自分のセンスを信じて作った作品を載せたら、それを見たトルコの方から声をかけていただいて、展示につながったんです。ポートフォリオに載せるために始めたことが、自分のスタイルの一つとして確立され、展示までつながった。だから行動力だけはあると思います。 私は「できる」と思ったらすぐやるタイプなんです。今もそうで、頼まれたら「やってみよう」と動くし、自分から提案もします。「これをやってください」と言われたことをそのままやるだけじゃなくて、「こうした方がもっと良くなると思う」と自分から提案するんです。

日本や東京への想い

東京はAmyさんにとってどんな場所ですか?

東京は地元ですが、まず、とても忙しい街ですよね。外国の方や観光客も多く、いろんな人が生き生きとしています。文化の回転も速く、時間が早く過ぎていく場所だと感じます。私は日本や海外の田舎にも行ったことがありますが、そこでの穏やかな雰囲気や人との温かいつながりと比べると、東京は全く異なる世界です。 流行の移り変わりも早いですよね。たとえば原宿/渋谷は“トレンドの聖地”。長い歴史を持ちながらも常に変化し続けている。あと渋谷の109ができた頃から現在まで、一貫してトレンドの発信地であり続けているのは本当にすごいことだと思います。 実際に歩いてみると、以前のロリータファッションから今はまた新しいスタイルに変わっていて、男女を問わず本当に多様な表現を見ることができる。海外の方が注目するのも納得です。東京、特に原宿は日本のクリエイティブ精神を体現している場所だと感じますね。

そんな東京はお好きですか?

クリエイティブな環境としては本当に素晴らしい場所だと思うのですが、時々、人と人の間に少し距離を感じることがあります。もう少し温かいコミュニケーションがあると嬉しいなと感じる瞬間があるんです。 私自身、コミュニケーションでは温かさを大切にしたいタイプで、打ち合わせも楽しい雰囲気でできたらいいなと思っています。真剣に取り組むことはもちろん大切ですが、みんなが笑顔で創作できる環境が理想です。そんなふうに楽しみながらものづくりができるクリエイターが、もっと増えてくれたらいいなと願っています。 東京は本当にクリエイティブな刺激がたくさんある街で、その点はとても好きです。ただ、仕事をしていて感じるのは、日本と海外を比べてみると、それぞれに良さがあると感じています。 日本は要件定義や手順を丁寧に踏む文化があって、これはとても安心感があります。細かなところまで配慮して、しっかりと準備してから進める姿勢は、日本らしい素晴らしさだと思います。 一方で、海外では「まず試してみて、そこから学ぼう」というアプローチもよく見かけます。どちらも価値のある方法ですが、日本の丁寧なプロセスは時として工数が膨らみがちになることもあるようです。 クリエイティブな作業では、実際に手を動かしてみて初めて見えてくる発見もたくさんあります。計画の大切さと、試行錯誤の楽しさ、この両方のバランスを上手に取れたら、もっと素敵な創作ができそうですね。

これからの道のり

さきほど海外に出るご予定があるとおっしゃっていましたが、現地でもお仕事を?

はい。フリーランスとして日本の案件と現地の案件を並行して受けられたらと考えています。

ますますワールドワイドになるんですね。これから挑戦やリスクを取る場面も多いと思いますが、やる/やらないの基準は?

私はズルズル考えないタイプで、「やる」と決めたらすぐ動くのが一番だと思っています。怖さがゼロになることはないけれど、プランAとBを用意しておくと踏み出しやすかったりします。人生は一度きりなので、やりたいことをやる方が心に余裕が生まれる。 迷うなら、まず自分が本当に好きかを体で確かめます。パソコンの前に座ると自然と手が動く、それなら、もう好きってことなんですよね。美術館に行き続けるのが楽しいなら、それもサイン。小さなきっかけを持っておくと、いざという時にすぐシフトできます。 また、自信が持てるものを一つでも持っていると、決断が早くなると思っています。私にとっては、マーケティングとコミュニケーションです。人と話すのが好きで、誰かの役に立てるなら自分からギブしたい。学んできたスキルを継続して活かし続けることも大事にしています。話す場面では笑顔を大事にしています。ミーティングでもまず笑顔。話してくれる相手がいること自体が嬉しいし、モチベーションになります。

実務を通じてスキルアップされてきた印象ですが、上達のために意識していたことはありますか?

会社に通いながらWebデザインのスクールに通っていたんです。マーケター時代からSNS投稿やチラシ制作はやっていたので、Web領域を強化するために。そこで営業も学べたのが大きかったです。実績を並べるだけでなく、「何の価値を提供できるか」まで伝えられないと、この業界は難しい。だから営業文面や提案をしっかり作り込みました。コミュニケーション力が高いほど勝てる場面は多いと感じます。そのスクールはマーケティングも含めサポート体制が強く、案件獲得のアフターフォローもあったのが助かりました。どこを選ぶかは本当に大事だなと。

夢のクライアントや、やってみたいお仕事の目標はありますか?

スタートアップなど、新しいものを生み出す企業のブランディングをしてみたいです。一つの企業に対してゼロからブランドをつくり上げるような仕事をしてみたい。 それから、自分でもブランドを持ちたい気持ちがあります。パートナーと「カフェをやりたいね」と話していて、例えばカフェをつくったら、そこからデザインをいろんな形に展開できると思うんです。カップやグッズ、アパレルと組み合わせるような形で。そういう広がりも面白いんじゃないかなと考えています。

届けたいメッセージ

今の活動を始める前の、過去の自分に伝えたいことはありますか?

つらくても諦めない。諦めたらそこで見られる世界は終わりだけど、諦めなければその先の景色が見える。つらい時期の先には幸せな期間が待っていると信じること。

そのとき、どんな未来を思い描いて乗り切っていましたか?

最初からすべてが整っていたわけではないので、家族に支えられつつも自分で何とかする覚悟を持ちました。デザインが好きならとにかくがむしゃらにやる。やりたいことを実現するにはどう動くかを考えて行動する。成功している方の話を積極的に取り入れる。そうしているうちに、未来の輪郭が見えてきました。 つらい経験をすると、自分を鼓舞する力が育つのかもしれません。「頑張れ、まだいける」と自分にエールを送り続ける。人生は誰かが代わりに進めてくれるわけじゃない。一度きりの人生のストーリーをどう描くか。成功者の話に学び、好きなことにがむしゃらになる。悩んでいる人がいたら、そのように背中を押したいです。

素敵です。最後に、世界に向けて一言あればお願いいたします。

私の過去は正直、濃い時間でした。でもそれを覆せるくらいデザインに注力してきたし、クライアントとは信頼関係を当たり前に築いていきたいです。楽しくつくる姿勢を忘れず、同じ悩みを持つ人の希望になれたら嬉しいです。どこかでご縁があれば、ぜひご相談ください。

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